「自分もクレジットカードを作れなかった」freee代表の佐々木がCEOとしてfreeeカードにかける想い
freeeのCEO、佐々木大輔のブログ記事「2017年の振り返りと「自動化」「可視化」にこだわる2018年」で、自分自身のクレカの審査に落ちた経験や、クレジットカードの普及が重要である点について触れてました。
今回は、クレジットカードに関わる体験や考えから、個人的な工夫まで、クレジットカードに絞って様々な角度でインタビューを実施。
前半である本記事では、そのときの体験や、freeeカード事業に取り組む背景・意義について聞いています。
※後編はこちら
【 聞き手:freee 木本 】
自分もクレカを作れなかった。
ー過去の大輔さん(注:社内での佐々木の敬称)のfacebook投稿で、創業間もないタイミングでもクレカを自分で作れなかったと聞きました。そのときの心境を伺えますか?
- freeeカードリリース時の投稿 -
カード発行だけの問題ではなく、そもそも銀行口座も作れないし、起業した直後というのは、信用ゼロなんだなというのをすごく実感したよ。
例えば、ファックス番号ないからサービスに申し込めないとか、「そういうものを持っていないから損する」みたいな、それだけ世の中に小さく扱われるみたいな部分があると思うんだよね。
クレジットカードもそういうものの一つで、「やっぱ落とされるんだ」みたいな。
あとは、会社を登記するというときも、公証役場に「電子認証でやりたいんですけど」と電話したら、「そっちのほうが面倒なんでやめて下さい」と言われた時は、「こういう後ろ向きな人達がいるせいで世の中は前に進まないんだな」とすごく怒りを覚えた。
クレジットカードも含め、自分の創業時に嫌だなと思ったプロセスや仕組みを変えていくということ自体が、freeeが提供していくべき価値だという想いもあるね。
クレジットカード関連のリリースを投稿したとき、有名な起業家からも「自分も作れなかった」とコメントが来たので、自分だけじゃなく結構みんな体験する問題なんだと実感したよ。
創業期は、もっとクレカを使いたかった
ー大輔さん自身の創業期に、クレジットカードを重宝した場面はありますか?
最近の新しいビジネスを始める人の支払いは、クレジットカードのほうが多いんじゃないのかな。
Amazonとかはそうだよね。G Suiteとかoffice365とかもそうだし、電子定款で電子署名しする人はAdobe Acrobat Proを買わないといけない。あれもクレジットカードで買うのが一番良いでしょう。そういった意味では、いまビジネスをやっていく上でのベーシックなツールってカード払いのものが大半。
でも、事業用にカードを本格的に使えるようになったのは、当時Amexの審査に通ってから。その頃、最初に作れたビジネスカードは限度額20万だった。「そんなのすぐに使いきるから意味ないじゃん」とは思ったね。
ー会社の予算とは別に、「クレカの限度額」を気にしながら買い物をしなきゃいけないですよね?
そうだね。最初のころは判子とかもネットで買うし、ほとんどの出費はAmazonとか、ネット上でウェブサイトのテンプレとか、ドメインとか買ってたんだよ。
基本的な申し込んでおかないといけないやつに加えて、実はe-faxは申し込んだ、月々2~3千円くらいでするし、ああいうのを積み重ねていくと、基本的なものだけで10万円いっちゃうよね。
あとは、クラウドワークスとかで、アイコン作ってもらったりすると、数万円とか使ってたね。ただ、毎月の限度額は限られているから、ネット関連のクレカでしか買えないやつ以外は現金になってしまう。
ー個人用でクレカをよく使う人は、月に20万とかいったりしますもんね。ちなみにクレカの利用限度額が増えて行ったタイミングはいつですか?
Amexを作った時かな。当時、誰かにAmexはいいらしいと聞いて、Amexを作ったら、たしかに限度額20万円は超えていた。
ゴールドカードにすれば、年会費はかかるから最初は気になったなんだけど、そもそも事業用に毎月10万以上カードを使うようになると、利便性のメリットが勝って、費用は気にならなくなったね。
ーそこからは、あまり限度額を気にすることもなくなりました?
そこから立て続けに他のゴールドカードや、freeeが有名になってから「ぜひなんかうちと提携しましょう」とか、「ぜひ作ってください」というオファーがいっぱい来て、そこから楽になったけどね。でもしばらくはAmexで十分っていうぐらい限度額はあった気がする。とはいえ、楽になるまでに1年ぐらいはかかったよ。
そういう意味では、freeeカードは、創業時でも限度額が最低50万円以上という条件で作れたのは、当時の経験を振り返っても価値あることだよね。
ライフカードさんも三井住友カードさんも簡単な商品開発ではなかったと思うけど、こういう取り組みこそスモールビジネスの応援になるはず。
当時のfreee x クレカ裏話
ーfreeeのサービス自体と、クレジットカードに関して、何か印象深いエピソードとかあったりしますか?
「クレカ作れない」問題は本当はもっと早く解決したかったんだ。
実はリリース1年目ぐらいに、利用者の方にアンケートをとったことがあって、「クレカを作れなかった」「クレカ作れると思ってさえいなかった」という人が多かった。
それで、その結果を持って、澄人さん(freeeのCOO)と色んなカード会社にも説明に回ったんだけど響かず。向こうからは「特典にしてあげるので、ユーザーに紹介してください」と提案してきて、「いやいや、そもそもカード持てていないんですって」というやり取りをして帰ってきたのを覚えてるよ。
それが、今回みたいな価値のある形でやっと実現できるようになったのは、意味あることだよね。
ーそんな過去もあったんですね...。ちなみにfreeeのサービス開発に関わることでも何かありますか?
そもそも、クレカの明細のほうが銀行の明細よりも各種バラバラで大変だった。会社ごとに仕様もぜんぜん違うし。どのカード会社が、どこからログインするのかとか、そういうのも含めてまったく分からなかった。それにしっかり対応してくるというのは、結構大変だったなというのがひとつ。
あと、未確定明細というのはどうするのだろうというのはすごく大きい問題だったと思う。カード会社によって、明細がそもそも未確定だったとしても取得できるタイミングが違うというのもあるし。そういう過去もあるので、クレジットカードの未確定明細の取得は非常に楽しみだった機能リリースだね。
freeeカードの先にあるものとは?
ーfreeeカードの先に見ている構想が何かあれば、お話してもらってもいいですか?
とにかく、B to Bの決済手段をもっと楽にしていきたいね。
リアルな場所だとカードかもしれないし、どんどん新しく代わってくるものも出てくるかもしれないですが、それらのキャッシュレス手段がビジネスの場面でも使いやすい状態にしておく、というのはfreeeとして絶対担保しておかなければいけないと思っている。
今度、銀行振込みたいな支払手段も便利にできる気がするよね。そもそも銀行振込の手続きはすごく大変だし、その手間とか、料金とかも、このままでいいのかということは感じてる。
あとは決済のタイミングというのも、世の中決済のタイミングがうまくいかないだけで資金調達しちゃう人もいるのだから、そういうところはむしろfreeeとしてお金の流れを読んで、先に解決してあげる形にできると理想かな。
決済が単なる決済ではなく、freeeがうまくその会社のお金の流れを読んで、力になれるようにする、そんな役割も担えるといいなと。
freeeカード利用者に向けて一言
ーfreeeカードを作った人やこれから作ろうとしている人に、メッセージをいただけますか?
お、いきなりだね。(笑)ではちょっと気分を変えて。
やはりキャッシュレスで進めていくことによって、色々な管理コストは圧倒的に下がるはずです。
クレジットカードは後払いなので資金繰りの改善を簡単にできるようになる、現金を置いておかなくてもよくなるし、それを後で集計して計算する必要もなくなります。
そして、意外と世の中、キャッシュレスで払えるようになってきている。freeeカードで開業したてでも発行できるように審査の形も変わってきました。
クレジットカードに悪いイメージを持っている方もいると聞きますが、「なんでカードで払えないの?」と一言いってやるくらいの感じで使って欲しいと思っています。...そんなこと言って良いのかな?(笑)
管理コストが下がることに加え、自分も経験者で、多くの利用者の話も聞いているのであえて断言しますが、大半の人は起業してすぐこまめに経理しようとはしません。絶対後回しになります。
そんな人でも、少なくともクレジットカード明細が全部自動で取得できて、大体こういう数値かというのが常に見れるようになるのは、かなり便利なはずです。
だから、ちゃんと管理できる人はもちろん、僕のようにきっちり自分で管理できる自信がない起業家ほど、一番最初に自動化・効率化できる方法を導入しておいてほしいですね。
ーありがとうございました。
前半は、freeeのCEOとしてクレジットカードやfreeeカードに関わる話を聞きました。
後半では「いち経営者として」クレジットカードについてどう考えているのか、また実際に佐々木がどうクレジットカードを使っているのかを聞いていきます。
→後半はこちら