確定申告者必見!税務署に目をつけられやすい勘定科目7選
確定申告の期限(平成27年は3月16日が締切)が視界に入ってきました。個人事業主や法人のみなさん、確定申告の準備は順調でしょうか? 決算書を作る途中で悩んでしまう「勘定科目」。
作るには作ったけれど 「勘定科目が合っているかどうかわからない!」 「税務署に目を付けられたらどうしよう...」
そんな不安を抱える方も多いと思います。そんな方に向けて、前回の
「勘定科目はこれだけ覚えれば安心!頻出勘定科目6選」に引き続き、「税務署に目をつけられやすい勘定科目」について解説します。
勘定科目と決算書
「勘定科目」とは、事業の取引を記録するときに、その取引の「性質」をあらわす項目名のことです。会計取引を記録する「仕訳」では、以下の項目を記録しなければなりません。
- 「日付」(いつ取引が起きたのか)
- 「勘定科目」(どんな取引があったのか)
- 「金額」(いくらの取引が起きたのか)
このうち「どんな取引があったのか」を示す「勘定科目」のうち代表的なものは以下のとおりです。
- 「収支」をあらわすもの(売上、仕入など)
- 「経費」をあらわすもの(旅費交通費、消耗品費、交際費など)
- 「高額の財産」をあらわすもの(工具器具備品、車両運搬具など)
さて、個人事業主の確定申告にあたり、申告する所得を計算するために「決算書」と呼ばれる次の書類を作成します。
- 収支内訳書(白色申告の場合)
- 青色申告決算書(青色申告の場合)
これらの「決算書」を作成するにあたっては、「記帳」という作業によって日々の取引を「すべて」記録した会計帳簿が必要です。
「記帳」作業では「勘定科目」をどれにするか迷うことが多いのですが、その中でも 「税務署から目をつけられやすい勘定科目ってどんなものがあるのか?」 を知っておくと、注意深く作業を進めることができるでしょう。
よく目をつけられやすい勘定科目の例
ケース1:年度末をまたがる取引(「売上」「仕入」)
課税当局(税務署)としては申告される「課税所得」が多ければ税収が増えるので、「課税所得」をより小さく見せるような数字には敏感に反応します。この「課税所得」は、収益と費用の差額である「利益」に連動します。
たとえば取引が年度末(12月)をまたぐ場合には
- 売上をより小さく見せる
- 仕入をより大きく見せる
ことで「課税所得」が小さくなります。その結果、納める税金が少なくなりますが、税務署に対して 「売上を翌年度に持ち越してないか?」 「仕入を当年度に押し込めてないか?」 といった疑念を生じさせる要因になりかねません。実態どおりであればなんら問題ではありませんが、意図的に数字を動かすような記録はしてはいけません。
青色申告事業者が作成する「青色申告決算書」では、「売上」と「仕入」について毎月の内訳を記入することになります。集計された数字が
- 12月の「売上」の金額が急に小さくなっている
- 12月の「仕入」の金額が急に大きくなっている
という内容になっていたら要注意です。取引の実態どおりに記録して、年度末をまたがる取引については「未収」「未払」の処理を正しく行いましょう。
ケース2:高額な備品の購入(「減価償却費」)
一点あたりの購入金額が10万円以上の高額な備品を買った場合は、全額をその年度の経費にするのではなく、その後何年かにわたって経費を負担させるように計算します。これを「減価償却」といいます。
固定資産の減価償却の処理は、購入金額によって次の3つのパターンに分けられます。
- 10万円未満(または使用期間1年未満):全額をその年度の経費にする(少額減価償却資産)
- 10万円以上20万円未満:3年かけて経費にする(一括償却資産)
- 20万円以上:耐用年数にもとづいて減価償却を行う(減価償却資産)
※なお、中小企業者(資本金が一億円未満の法人)及び個人事業主については「購入金額が30万円を下回る固定資産については、ある一定の要件を満たせば全額をその年度の経費にすることができる」という税制上の優遇措置があります。 こちらの解説が非常にわかりやすいです。
逆に考えると、「20万円以上の固定資産」について全額経費計上していては当然まずいことになります。青色申告決算書では「減価償却の計算」というシートを作りますが、ここで20万円以上の固定資産について、ルールどおりに減価償却費を計算しているかどうか再度確認しておきましょう。 「めんどうだから全部経費にしてしまおうか...」 と考えると、後で痛い目に遭います。
なお、固定資産の減価償却費は「購入した一点ごとに」計算しますので注意しましょう。 また、税込・税抜経理によっても償却方法が異なります。 たとえば、税抜経理を選択している場合、次のような扱いになります。
- 税抜98,000円→全額をその年度の経費にする
- 税抜100,000円→3年かけて経費にする
税込経理を行っている場合は、税込の取得金額が30万円未満の場合はその年度の経費にすることができます。
ケース3:個人的な飲食代(「福利厚生費」「交際費」)
「福利厚生費」は個人事業主の方自身や、一緒に仕事している家族や従業員に飲食代を負担したりしたときに使う勘定科目です。 「交際費」は、取引先などに接待や供応をしたときに使う勘定科目です。 どちらも必要な経費を記録するための勘定科目ですが、使いすぎると税務署に目をつけられてしまいます。
領収書を集計しているときに「事業に関係しない個人的な飲食代」が混ざっているようであれば、決算書を作るときには除外しておきましょう。たとえば「交際費」として計上しているものであれば 「誰と行ったのか?」 「人数と金額がアンバランスになっていないか?」 などが目をつけられやすいので注意してください。
ケース4:自宅を事業所として利用している(「水道光熱費」「地代家賃」)
個人事業主の方であれば、自宅を仕事場にしている方も多いと思います。その場合、支払っている家賃や電気料金・水道料金などの諸経費の一部を経費に計上することが認められます。 確定申告では「家事按分」という処理でこの経費計上の処理を行いますが、このときの「事業」と「家事」の割合は、現実的な数字を設定する必要があります。
たとえば「家賃」であれば、床面積の割合などで「事業関連費」と「家事関連費」に按分します。仕事専用部屋があるならば、その面積をもとに「事業関連費」の割合を出します。 「水道光熱費」については、「家事関連費」の割合を厳密に出すのが難しいのですが、一般的には「事業関連費」は総額の10-20%以内とします。
「いや、自分は風呂もトイレも100%仕事のために使ってるよ!」 と仮に主張しても、税務署には怒られるだけですので気をつけましょう。
勘定科目で目をつけられないようにしよう
特に目をつけられやすい勘定科目について紹介してきましたが、いかがでしょうか? 今回のケースに限らず、税務署にいたずらに目をつけられて困ったことにならないようにするためには「正直に記録する」のが一番の近道です。憂鬱な確定申告をスムーズに終わらせるために、がんばって決算書を作りましょう。
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