税理士や弁護士といった士業と源泉徴収とのちょっと複雑な関係
復興特別所得税でややこしくなった士業の源泉徴収を知ろう
税理士や弁護士と言ったスペシャリストの形態で働くことで得る報酬にも源泉徴収が必要となります。つい謝礼のような感覚であいまいにしがちですが、専門職としての業務を遂行した対価として支払われた報酬は源泉徴収の対象となるのです。ただし、ケースバイケースで源泉徴収をして支払わなければならない場合と必要ない場合とがあります。ここでは、税理士や弁護士といった士業と源泉徴収とのちょっと複雑な関係を探ってみたいと思います。
[目次] ■1)源泉徴収の対象となるのは? ■2)源泉徴収の計算 ■3)源泉徴収の納め方は? ■4)源泉徴収をし忘れたときは?
■1)源泉徴収の対象となるのは?
税理士や弁護士に仕事を依頼した際、その報酬や料金を支払う際には源泉徴収をしてから渡す必要があります。源泉徴収で支払者が納付すべきなのは所得税と復興特別所得税です。
報酬や料金と聞くとあいまいでイメージが漠然としていますが、基本的に業務に対する謝金や仕事を進める上での調査費のほか、日当や旅費といった金銭がその対象です。ただし、旅費として支払われる名目は対象となるものの、交通機関やホテル等の通常必要な範囲内の交通費や宿泊費等は対象外です。さらに、弁護士が支払者に変わって登記や申請のための手数料を受け取った場合も源泉徴収の必要はありません。
■2)源泉徴収の計算
従来であれば税理士や弁護士に支払う報酬や料金の源泉徴収計算はとてもシンプルで10%でした。仮に、支払金額が100万円であれば10%の源泉徴収税額である10万円を差し引きしていました。
それが、平成25年度から復興特別所得税が課されることになったため、所得税率にプラスして復興特別所得税率2.1%が絡みます。複雑になったことで、注意して計算をする必要が出てきました。
・支払金額が100万円以下 支払金額に所得税率10%に復興特別所得税率2.1%を上乗せした10.21%で計算します。
・支払金額が100万円を超える 支払金額から100万円を引いて、20.42%を掛けた後、102,100円を足した結果が源泉徴収税額です。
■3)源泉徴収の納め方は?
支払者が税理士や弁護士への報酬や料金から差し引いた源泉徴収税は、支払いがあった月の翌月10日までに税務署に納付することが定められています。管轄の税務署のほか金融機関の窓口でも納付を受け付けてくれます。源泉徴収を納付する際は、一般的に税務署が配布している「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」に必要事項を明記して提出します。
一方、税理士や弁護士等への報酬から源泉徴収したものを納税する際は「給与所得・退職者等の納付書」という書式が異なる用紙になりますので注意が必要です。
また、納期の特例適用を受けているかどうかで様式が異なるため、支払者は税務署に確認するようにします。特例適用の支払者なら半年に1回の納付で済ませられるのでとても便利です。
書式の記入方法としてとくに抑えておきたいのが「『税理士等の報酬』欄」です。税理士や弁護士を代表例として、そのほかに同じような源泉徴収の処理をされる職種には公認会計士や社会保険労務士、司法書士、弁理士、建築士、土地家屋調査士、不動産鑑定士といった、いわゆる士業が当てはまります。
■4)源泉徴収をし忘れたときは?
もし、税理士や弁護士が依頼者からの報酬を源泉徴収税額分を引かれないまま受け取ってしまった場合はどうしたらよいのでしょうか?
源泉徴収の原則に立ち戻ると、あくまで税理士や弁護士の報酬を受領するときは、源泉徴収分を引かれた残りを受領することになります。そもそも、源泉徴収のしくみは報酬を支払った側が源泉徴収税額を差し引いて税務署に納付するものです。万一、報酬を支払うときに誤って差し引きなしで支払ってしまったとしたら、多く受け取りすぎた税理士や弁護士に源泉徴収税額分を返金してもらうようにお願いします。その後、返金分を支払者が税務署に納付します。
さらに面倒なケースで、支払い側が返金を求めても応じなかった場合はどうなるかというと、源泉徴収義務者が支払者と定められている以上、最終的には支払者が負担する流れとなります。税理士や弁護士に報酬を支払うことがあれば、必ず請求書に源泉徴収税について明記しておくことで無用なトラブルを防ぐことができます。
■税理士や弁護士報酬に関する源泉徴収についてまとめ
「先生!」と呼ばれる専門職の有資格者に報酬を支払うときにも源泉徴収の処理が必要です。10%で計算すればよかったところが復興特別所得税が導入されて計算式がややこしくなったのが要注意です。報酬や料金を支払うときには、源泉徴収に該当するかどうか、そしてちゃんと源泉徴収税額を差し引いてお渡ししているかどうか、今後も気をつけましょう。
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