確定申告で企業年金の受給者が銀行に問い合わせる質問TOP5とその解説
退職後、はじめて確定申告する際知っておくべきことを、企業年金を中心にまとめました。
企業年金は退職後の生活が安定したものとなるように、退職金を年金として10年、20年などの希望する期間に受け取る制度で、企業年金制度のある企業で実施されています。年金に関わる税金について疑問をなくし、確定申告に困らないようにしましょう。
■そもそも企業年金制度とは?いったん頭の中を整理しよう!
・企業年金制度は以下の3制度があります。 1) 厚生年金基金制度 2) 確定拠出年金制度 3) 確定給付企業年金制度1) 厚生年金基金制度 厚生年金基金制度は昭和41年に発足した制度で、企業の状況に応じ、従業員に老後保障を行う事を目的としています。平成15年9月から、確定給付企業年金法が制定され、代行部分を国に返し(代行返上)、確定給付企業年金へ移行することも認められるようになっています。
2) 確定拠出年金制度 確定拠出年金が発足した背景には、これまでの確定給付型の企業年金が、中小企業や自営業者に十分に普及せず、転職時の年金資産の移換が不十分でああったなどの問題が指摘され、これらの問題に対処するため、平成13年10月に確定拠出年金制度が導入されました。確定拠出年金は、個人ごとに明確に区分され拠出された掛金と、運用益との合計額から給付額が決定される仕組みです。
3) 確定給付企業年金制度 確定給付企業年金制度が発足した背景には、終身年金を原則とする制約がある厚生年金基金制度が、近年の資産運用環境の悪化等により財政状況が大変厳しいものとなったことから、労使の合意で柔軟な設計を行うことができる企業年金制度の創設の要望が寄せられた経緯がありました。そこで誕生したのが、労使の自主性を尊重しつつ、受給権の保護等を確保した企業年金制度として、平成14年4月に確定給付企業年金制度が導入されました。
その他)国民年金基金制度 国民年金基金制度は基礎年金の上乗せをする制度です。サラリーマンには、厚生年金保険、厚生年金基金等の基礎年金の上乗せの制度があるのに対し、国民年金第1号被保険者(自営業者など)は、基礎年金のみだったため基礎年金の上乗せの年金制度として、国民年金第1号被保険者が老後の所得保障の充実を図ることを目的とし、所得等に応じて加入口数や給付の型を自らが選択することができる制度として平成3年に導入されました。
■質問その1)会社を退職後、企業年金を受け取っていますが、税金はどう納めれば良いのでしょうか?
退職して企業年金を受け取ると、雑収入になり、確定申告が必要です。雑所得とは、他の9種類の所得(給与、事業、利子、配当など)のいずれにも該当しない所得で、公的年金等、貸金の利子、職業とする人以外の原稿料、講演料などが該当します。 企業年金は公的年金等として扱われ、収入の条件によっては、確定申告が不要です。① 所得の計算方法
企業年金の所得金額=企業年金収入金額-公的年金等の控除額
企業年金の所得金額は、上記のように計算します。この所得金額から税金の金額が計算され、その税額を源泉徴収され企業年金が払い込まれます。ここで公的年金等の控除額とは、受給者の年齢、年金の収入金額により決められています。
② 企業年金を受けている人は、以下にあてはまる場合、所得税の還付が受けられる可能性があり、確定申告書を提出すれば還付が受けられます。 ・マイホームを住宅ローンなどで取得した場合 ・法で定められた一定額以上の医療費を支払った場合
③ 確定申告をするときの流れ 次の書類を準備します。 ・企業年金の源泉徴収票(原本)や給与所得があればその源泉徴収票(原本) ・私的年金等を受給している場合には金額が分かるもの ・医療費の領収書、年金の控除証明書、生命保険料の控除証明書、地震保険料の控除証明書
書類の準備ができたら、税務署で確定申告書を作成しますが、確定申告書は「A」と「B」の2種類があり、申告する内容に合わせて選択し、マニュアルに沿って作成します。
④ 確認しておきたい注意事項 所得税の確定申告が不要な場合であっても、以下に該当する人は住民税の申告が必要な場合があります。
1)公的年金などの雑所得のみで、次の控除の適用を受ける場合 ・生命保険料控除 ・損害保険料控除 ・医療費控除
2)公的年金などの雑所得以外の所得がある場合 ・生命保険や共済などの契約に基づく個人年金 ・給与所得 ・生命保険の満期払戻金
■質問その2)企業年金にかかる税金はいくらかかるの? 企業年金に控除はある?
企業年金が支給されて暮らしは少し安定するけれど、年金に課税されて支給額が減るのは痛いところ。いくら税金がかかるか気になりませんか? 確定申告するときに計算する必要がありますので、その算出方法をご紹介します。① 企業年金は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。 この雑所得となる主な公的年金等というものは、次のものです。 ・国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法で定められた年金など ・これまで勤務してきた会社から支払われる年金など ・外国の法令に基づく保険や共済による年金の類
② 企業年金からの源泉徴収があります。 ・企業年金の支払を受けるときは、原則として収入金額からその年金に応じて定められている一定の控除額を差し引いた額に、5.105%を掛けた金額が源泉徴収されます。
③ 企業年金所得の金額の計算方法を示します。 (a)企業年金の収入金額の合計額、(b)割合、(c)控除額が、雑所得の速算表として、65歳以下と65歳以上に区分され、まとめられています。
企業年金の所得の金額=(a)×(b)-(c)
例えば、65歳以上の人で「公的年金等の収入金額の合計額」が400万円の場合には、公的年金等に係る雑所得の金額は次のようになります
400万円×75%-37.5万円=262.5万円
この金額に5.105%を掛けた金額が、税金として源泉徴収されます。
■質問その3)源泉徴収されているなら、企業年金の確定申告はしなくても良いの?
企業年金などの公的年金等は、支給時の税額が源泉徴収されます。源泉徴収されるのなら、確定申告する必要はないかと、思われることでしょう。半分は正解で半分は間違いです。所得控除の優遇措置のある費用が出ているときには、少し手続きが面倒でも効果抜群の確定申告について、申告要否の違いを見ていきましょう。① 申告手続が必要か不要かの判断 企業年金の所得金額から控除金額を引いて残額がある場合は、確定申告を提出します確定申告を出すことで、所得控除が受けられます。
所得控除の種類は、医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除(38万円)など生活に密着する費用です。
②「公的年金等に係る確定申告不要制度」により、次の2項目が該当するときは、確定申告は不要です。 ・1年間の公的年金等の収入金額が400万円以下である場合こと ・1年間の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合
③ 確定申告が不要な場合に該当しても、医療費控除などの税の優遇措置を受ける必要があるときは、確定申告を提出しないと所得控除が受けられません。
■質問その4)企業年金の受給者が亡くなってしまいました。その際の手続きを教えてください。
年金受給者が亡くなった場合は、速やかに企業年金基金やその会社に連絡をしましょう。その後、死亡手続きが行われ、亡くなった方の源泉徴収票が届きます。① 死亡手続きが完了したら ・ご遺族の源泉徴収票が届きますので、それを基に準確定申告を行ってください。 ・準確定申告とは納税者が死亡した時の確定申告のことを指します。 ・準確定申告の対象となる所得金額と税額は、その年の1月1日から亡くなった日までの期間分です。 ・相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をする必要がありますので、注意しましょう。
② まだ受け取っていない期間分の年金はどうなるの? ・遺族の方が代わりに受け取ることが出来ます。 ・年金としての受け取り、または一時金として支払いが出来る場合が多いようです。
■質問その5)企業年金の受け取り方法を変更したいのですが
企業年金を受給者が、様々な事情で年金の受け取り方法の変更が必要となった場合の事例を見ていきましょう。① 住所や氏名の変更、受け取り口座の変更が必要になった場合 転居・婚姻手続きなどで個人情報の変更が必要となった場合や受け取り口座の変更は、企業年金の担当者にお問い合わせをし、速やかに手続きをおこなってください。企業によっては変更手続きに1~2か月ほどかかることもあるようです。
② 一括で年金を受け取りたい場合 「急にまとまったお金が必要となったので、年金から一時金に変更して受け取りたい」といった場合は、企業年金の担当者に確認が必要です。 企業年金の受け取り方のルールは企業ごとに異なっていますし、同じ会社に勤めていても、個人ごとに受け取り方や金額が異なってくるので、一概に言えないのが実情です。変更が出来るかの判断は、自分だけでしないようにしましょう。