青色申告特別控除を利用しよう|確定申告の基礎知識
「青色申告」という言葉はよく耳にしますが、実際に青色申告制度がどのような制度かご存知でしょうか。確定申告時に青色申告制度を利用することで、所得控除ができることは有名ですが、手続きや適用要件についてはあまり正しく理解されていないのが現状です。青色申告制度の仕組みや手続き、適用要件を正確に理解し、確定申告時に青色申告特別控除を有効活用できるように確認してみましょう。
1)青色申告制度とは
青色申告制度とは、一定要件を満たす正しい申告に対し、所得控除などの特典を認める制度です。青色申告制度には大きく分類して4点の特典があります。
・青色申告特別控除
不動産所得または事業所得に該当する事業を営んでいる青色申告者が対象となります。複式簿記による記帳を行っていて、その記帳を基に作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して確定申告期限内に提出することで、最高65万円の所得控除を受けることができます。
・青色事業専従者給与
生計を共にしている配偶者や親族に対する給与を、適正額であれば必要経費として計上することができます。
・貸倒引当金
事業所得が発生する事業において、業務上発生した売掛金や貸付金などについて、回収不能による貸倒損失見込み額を貸倒引当金として必要経費に計上することができます。
・純損失の繰越しと繰戻し
事業所得に損失(赤字)がある場合で、その他の通算できる所得と合算しても控除しきれない場合には、翌年から3年間にわたって繰り越しその後に発生する所得から控除することができます。
余談になりますが、上記のような特典を設けてまで青色申告制度を制定した理由をご存知でしょうか? それは、日本では納税者が自ら所得金額や税額を計算する申告納税制度を採用していることが理由です。正しい会計処理と納税を行ってもらうことを目的として、一定水準以上の会計処理と申告に対して特典を与えています。
2)青色申告制度の手続きと適用要件
青色申告の適用を受ける初年度には、納税地の所轄税務署長へ「青色申告承認申請書」を提出し、承認を受けなければなりません。新たに承認を受けるときは、青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までに提出する必要があります。
また、年の途中から事業を開始したとき(その年の1月16日以降に開始したとき)は業務を開始した日から2ヶ月以内の提出で承認を受けることが可能です。なお、「青色申告承認申請書」は国税庁のHPからダウンロードすることができます。
青色申告の適用を受ける要件には、一定水準の記帳とその記帳を基に正しい申告をすることが挙げられます。具体的には、複式簿記による帳簿記録を行い、その帳簿を基に貸借対照表と損益計算書を作成することが必要です。
本来であれば正規の簿記の原則にのっとった厳密な帳簿作成を求められますが、簡易な記帳をしていても現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などの帳簿を作成したうえで、最終的に貸借対照表と損益計算書を作成できる組織的なものであれば認められます。
これらの帳簿を基に確定申告書を作成し、法定申告期限内(例年2月16日から3月15日)に確定申告書を提出することが青色申告の適用を受ける要件となります。例外的な取り扱いとなりますが、上記の記帳方法に依らない現金主義による記帳や簡易な記帳でも10万円の青色申告特別控除を受けることも可能です。
これらの帳簿および付属する書類は原則として7年間(書類によっては5年間)保存しなければなりません。
3)青色申告特別控除の効果
青色申告が適用されると、不動産所得または事業所得が発生する事業を営んでいる方は所得から65万円の青色申告特別控除を受けることができます。それでは、青色申告特別控除の効果を実際の所得にあてはめて、65万円の所得控除でどのくらい所得税の金額が変わるのか見ていきましょう。
青色申告特別控除適用前の所得金額が300万円から1,000万円までの4つのケースでは下表のような結果になります。 青色申告特別控除適用前の所得金額が300万円だと年間の所得税額が65,000円軽減され、所得金額が1,000万円のケースでは214,500円減額になります。しかも、青色申告特別控除の効果は所得税だけにとどまらず、住民税や国民健康保険料にも適用されます。つまり、全てを合わせた節税効果や保険料軽減効果は非常に大きなものとなります。
4)青色申告特別控除の活用は積極的に
青色申告制度についていろいろと確認してきましたが、いかがでしょうか。前述の通り、青色申告特別控除は所得税や住民税の節税効果だけではなく、国民健康保険料の軽減にもつながりますので、不動産所得や事業所得のある方には是非ともご活用いただきたい制度です。
手続きや適用要件は多少複雑ですが、青色申告特別控除については労力を割いてでも十分に手続きや申請を行う価値がありますので積極的に活用してください。最後になりますが、手続きや適用要件などで特に留意する項目を確認しておきましょう。
①「青色申告承認申請書」を期限までに提出し、事前に所轄税務署長の承認を受けなければならない。 ②複式簿記による記帳を行い、その帳簿を基に貸借対照表および損益計算書を作成して確定申告書に添付しなければならない。 ③確定申告期限内(例年2月16日から3月15日)に前年分の確定申告処理を行わなければならない。 ④上記で作成した帳簿書類は原則7年間(書類によっては5年間)保存しなければならない。