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2016年11月25日(金)

士業の正しい使い分けのコツ

経営ハッカー編集部
士業の正しい使い分けのコツ

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「税理士は必需品、弁護士はぜいたく品・・・。」

筆者が法律事務所に勤務していたころ、ボス弁(※その事務所の所長の弁護士)が顧問契約を逃がしたとき、よく言っていた愚痴です。

必需品と言われる(?)税理士から公認会計士、司法書士、社労士、弁護士等、難関な試験を突破した先生方を使い分けるなんていうのは、言語道断かもしれません。しかし、一方で、利用すれば高くつくのがこの専門サービス。利用するタイミングとポイントについて考え、士業の叡智を上手く使って、経営の困難を乗り越えましょう。

個人で事業を始めた方を参考に考えてみましょう。

個人が税理士を利用する際の分岐点、それは「収入が1000万円を超えたところ」だと言われています。2事業年度前の収入が1000万円を超えていると消費税の申告が必要になります。消費税には、課税か免税か非課税か、また簡易と本則に分かれていることから専門的な知識と少々面倒な計算が必要になります。

また、利益が赤字でも収入が1000万円を超えていれば消費税の申告が必要になるので、事業者の負担は重く、今後10%に変更や軽減税率が導入されるとより複雑になります。ここは税理士に依頼する一つのタイミングです。

逆に言えば、1000万円以下であれば、自分でも確定申告ができるがんばりどころとも言えます。最初から専門家に投げるのではなく、ビジネスの要である財務諸表を読む力をつけるために、ご自身でやってみるものおススメです。

確定申告の時期には無料の相談会も開催されています。会計がわからない経営者は、税理士顧問料を多めに取られる傾向があります。経営者が全く会計税務のことを知らないことは、長い目で見ると経営上のリスクでもあります。

税務署に個人事業の開業届の届出以後、あるいは法人の設立届の届出以後は、毎年の税務申告は義務となります。しかも税金にまつわる業務は年1回の税務申告に限りません。源泉所得税の納付や年末調整、源泉徴収票や法定調書の作成等多岐に渡ります。

また、税務調査とも無縁ではありません。税金は払わなくてはいけないものですが、その方法や計算によって金額が変わるものでもあります。年間を通して発生する業務ですので、いつでも税理士から助言が得られる環境を作ることは重要です。

税理士への報酬は、毎月の顧問料と決算料に分かれている場合が多いため、毎月の負担が重いということであれば、最初は決算のタイミングで利用する方法があります。

個人事業の収入が1000万円を超えると、消費税申告の観点から法人の設立を考えるようになります。そこで、会社設立登記を検討する段階で登場するのが司法書士です。会社設立に必要な定款作成や認証、登記業務は20万円から30万円程でやってもらえます。

しかし、よほど特殊な法人の設立でない限り、会社設立は自分でできてしまう手続きにもなりました。法務局でも丁寧に教えてくれます。定款の電子認証使うと印紙代もかなり節約できます。会社設立時にまだ事業が本格的になっていない場合は、自分で挑戦してみるのも一つです。

設立以後も役員の変更や株式関係で登記は必要になります。きちんと登記しないと登記の懈怠(※「けたい」義務を怠ること)になり、過料の対象になります。役員の病気や死亡、いい物件が見つかることによる本店の移転、資金調達の必要性等は待ってはくれません。すぐに動いてもらえる司法書士を探しておきましょう。

会社になり、事業も順調、従業員も増えていき、社会保険の加入、喪失、給与の計算が膨大になるとそろそろ社労士の出番です。

しかし、給与計算等は計算の負担が減るタイムレコーダーやソフト等機械で補完できる部分もあります。社会保険も加入と喪失だけであればそれほど複雑ではありません。

一方で、労災の申請や助成金の申請等が必要になる場合があります。ここが社労士に依頼する一つのタイミングです。助成金は頻繁に中身が変わり煩雑な手続きを伴うため、経営者にとっては少々面倒な部分もあり中々活用できないのが本音。しかし、従業員も事業主も保険料を払うだけでは少しもったいない。経営難や従業員のライフステージの変化への一助になるよう賢く利用しましょう。

人が増えれば争いごとも増えます。対従業員、対取引先とのトラブルが生じます。建物の明渡し、元従業員からの労働訴訟、取引先の不払い等様々な問題の解決に弁護士が必要となってきます。

近年では争う額が少額だと、裁判1回で済ませることのできる少額訴訟制度が登場し、必ずしも弁護士をたてなければ解決できないということでもなくなりました。内容証明を送る程度であれば、市販にも参考書がたくさん出回っています。内容証明を弁護士に依頼すると数万円かかりますが、自分でやれば数千円です。

一方で、弁護士へ委任することで、訴訟に関する郵便物や連絡はすべて弁護士のところに行きます。依頼時には目安として訴額(支払いを相手方に請求する額)の10%ぐらいからの着手金が必要です。けして安くはないかもしれませんが、手続きの煩雑さや交渉の難しさ、精神的負担を考えると、委任することで経営に集中でき、予想される法的な損失のカバーができるかもしれません。

先生方それぞれに得意不得意があり専門分野をもっています。また士業は一般に書類の取り寄せや調査等に関する職務上の特権を持っています。経営には士業から協力を得ることが必要不可欠です。

士業同士には横のつながりがあり、いずれかの先生に頼めばご紹介してもらえる場合も多々あります。士業、経営者双方にとっても紹介は一つの信用であり、安心して任せられるまた受任できるメリットでもあります。ぜひ積極的に士業のネットワークを活用して、トラブルの予防・解決に役立てましょう。

それと同時に、頼む側が丸投げしないことは非常に重要です。あなたの会社に将来、経理部も人事部も法務部も必要になった時のことを意識して、会計税務、労務、法律の基礎的な知識をブラッシュアップすることが、優秀な士業を見分け、よりよい士業サービスを受ける土壌となることでしょう。

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