配偶者控除の見直しにより、女性の社会進出は促進されるか?

平成29年度税制改正で焦点となっているのが、配偶者控除の見直しです。2016年8月末には配偶者控除を見直して、片働き世帯、共働き世帯ともに所得控除ができる新しい制度(夫婦控除)の創設が有力視されていましたが、最終的には見送りとなる公算が大きいようです。
配偶者控除とは?
配偶者控除とは、給与収入のみでその収入が年間103万円以下の配偶者(妻または夫)がいる場合、その配偶者の夫または妻の所得から一定額を控除して税金の計算を行う制度です。配偶者が70歳未満であれば、所得税の場合は38万円、住民税の場合は33万円を控除して税額の計算を行います。
給与所得のみの会社員が配偶者控除を受けることによる税金軽減額は、下表のとおりです。所得税は累進課税方式(所得の増加とともに税率が5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%と段階的に上がる仕組みの課税方式)を採用しているため、年収が上がれば上がるほど、配偶者控除による恩恵が大きくなります。一方、住民税は税率が一律10%(一部地域を除く。)であるため、税金軽減額も一律33,000円になります。
103万円の壁を超えても配偶者特別控除がある
税金がかからないようにとパート・アルバイトの方が就労調整すると言われる「103万円の壁」。103万円を1円でも超えると大幅に税金が増加というイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そのパート・アルバイトの方の配偶者の合計所得金額が1,000万円以下であれば、配偶者特別控除という制度により所得控除が可能であり、急激な負担増とならないよう緩和措置が取られています。
なお、合計所得金額1,000万円というのは、給与収入のみの方であれば年収1,230万円(平成28年の場合。平成29年以降の場合は1,220万円)に相当します。 配偶者特別控除の控除額は、配偶者の所得金額(給与収入のみの方は給与収入から65万円を差し引いた金額)に応じて以下の通りになります。
<所得税>
・ 38万円を超え40万円未満:38万円 ・ 40万円以上45万円未満:36万円 ・ 45万円以上50万円未満:31万円 ・ 50万円以上55万円未満 26万円 ・ 55万円以上60万円未満 21万円 ・ 60万円以上65万円未満 16万円 ・ 65万円以上70万円未満 11万円 ・ 70万円以上75万円未満 6万円 ・ 75万円以上76万円未満 3万円 ・ 76万円以上 0円
<住民税>
・ 38万円を超え45万円未満 33万円 ・ 45万円以上50万円未満 31万円 ・ 50万円以上55万円未満 26万円 ・ 55万円以上60万円未満 21万円 ・ 60万円以上65万円未満 16万円 ・ 65万円以上70万円未満 11万円 ・ 70万円以上75万円未満 6万円 ・ 75万円以上76万円未満 3万円 ・ 76万円以上 0円
例えば、扶養している配偶者に125万円の給与収入がある場合、給与所得は60万円ですので、所得控除額は所得税、住民税ともに16万円となります。上記の年収600万円の場合の例に当てはめると、配偶者特別控除の適用を受けることによる税金の軽減額は約3万円となり、配偶者控除と比較して約4万円の負担増となります。
さらに、配偶者自身にも所得税・住民税の合計で約4万4千円の課税が生じます。給与収入が100万円だった場合と比べると給与収入が25万円増えるのに対し、課税額が約8万8千円増えることになります。
導入が検討された夫婦控除は所得控除?税額控除?
平成29年度税制改正の中で検討された共働き世帯でも、控除を受けられるという夫婦控除。検討の過程で、夫婦控除を導入する場合には、現状の配偶者控除と同じ所得控除とするか、それとも税額控除とするかという議論がなされました。
所得控除と税額控除の違いは、下記の通りです。
税額控除のデメリットを補うものとして、給付付き税額控除(税額控除しきれない金額を給付するという方法)が考えられますが、事務負担の大きさや制度の悪用等の可能性があり、政府としては導入に慎重になっている面があるようです。
配偶者控除が女性の社会進出を阻害している?
「配偶者控除が女性の社会進出を阻害している」との批判がありますが、配偶者控除がなくなったとしても、社会保険の扶養から外れてしまうという130万円の壁(従業員が501人以上いる企業に勤めている場合には106万円の壁)があり、負担という面でみるとこちらのほうが影響は大きいといえます。現在、配偶者控除に所得制限などを設けて適用対象を150万円まで広げようということも検討されているようですが、これも新たに150万円という壁を作るということになりかねません。
そして、忘れてはならないのは、103万円、106万円、130万円という壁はパートタイマーを対象にしたものであるということです。女性の社会進出を促進するという面で考えれば、パートタイマーに少しでも多く働いてもらうということよりも、フルタイムで働くことを望む女性が活躍できる環境を整えることが先決といえるでしょう。
待機児童問題、親の介護、夫の長時間労働による家事への不参加、男性の育児休暇取得率の低迷などを解決し、より多くの女性がフルタイム勤務で活躍できる社会になってもらいたいものです。