「医療費ってそんなにかかるの⁉︎」家族の長期入院に直面したフリーランスに起きたこと
フリーライター(元東京国税局職員)の小林義崇です。
今回は、私の実体験を記事にします。
話は2017年12月末にさかのぼります。それまで元気だった妊娠中の妻が突然入院することになり、以来、2ヶ月以上にわたり仕事に加え看護や家事、育児などに対応してきました。
今回は、この2ヶ月間の経験を踏まえ、私が直面した驚くほど高額な医療費や、医療費負担の助けとなってくれた公的保険制度の仕組みについてご紹介したいと思います。
「10日間で25万円」高額な医療費に驚愕
クリスマスを目前に控えた2017年12月21日のこと。取材先に向かっていた私のスマホに妻からの着信がありました。気にかかりながらも取材を終え、電話をかけ直したところ「入院することになった」とのこと。
何となく胸騒ぎを感じました。というのも、当時の妻は出産予定を約3ヶ月後に控えていたからです。入院のきっかけになったのは、毎月受けている妊婦健診でした。
慌てて病院にかけつけた私が医師から告げられた病名は、「妊娠高血圧症」。妊娠後期に見られる高血圧などを総称する症状で、それほど珍しいものではないとのこと。とはいえ、症状を放っておくと母子ともに危険な状況にもなりかねないとのことで入院して様子を見ることになりました。
「ひとまず、4週間程度見ておいてください」
医師の言葉を聞いて「長いな」と正直感じましたが、こればかりはやむを得ません。かくして、その日から私と息子2人だけの生活が始まりました。結局、入院期間は2月下旬まで伸びてしまったのですが……。
それからクリスマスを過ぎ、正月を過ぎた頃、病院で「12月分の医療費の明細」を受け取った私は、その金額に驚きました。その額、なんと約25万円。12月分ですから、まだ10日程度の分です。
「このまま入院が長期になると、大変なことになる」
正直、そう感じました。私はフリーランスなので家事や看護についてはある程度自由に動けますが、その代わりに仕事量は減らさざるを得ません。ですから、民間の医療保険には加入していたものの、収入減と治療費のダブルパンチに耐えられるかという不安を感じました。
そんな私の助けになったのが、日本の優れた「公的保険制度」。次のトピックから説明しますが、私の場合、医療費負担のほとんどを公的保険制度でまかなうことができました。
すぐに申請すべきだった「限度額適用認定証」
病院で入院手続きをするときに教えてもらったのが、「高額療養費制度」と「限度額適用認定証」という公的保険制度でした。まず、「高額療養費制度」を説明します。
保険証を提示することで、医療費の自己負担分が3割になっていることはご存知だと思いますが、私の場合、3割計算をしても10日で25万円。単純計算をすると、1ヶ月あたり75万円になってしまいます。
しかし、医療費の自己負担分には、上限が定められており、上限額を超える支払額は払い戻しを受けることができます。この仕組みが「高額療養費制度」です。差額ベッド代や食事代など一部の費用は制度に対象になりませんが、治療費や入院費のほとんどは、上限額以上に負担する必要はありません。
<厚生労働省のホームページより引用>
ただし、気をつけなくてはならない点があります。それは、高額療養費制度は、「上限額以上の金額をいったん支払わなくてはならない」ということ。つまり、一時的に自己資金が必要となるのです。
高額療養費の払い戻しを受ける際の手続きは、加入する健康保険組合によって異なります。私の場合は、医療費支払後に病院から健康保険組合に連絡が行き、後日、健康保険組合から私に払い戻しのための申請書類が送付されるとのことでした。
そのため、健康保険組合から書類が送られるまではできることは何もなく、実際に払い戻しを受けるまでにどれくらいの日数がかかるのかが読めません。きちんと書類が届くといいのですが……。
この問題を解決するために有効なのが、「限度額適用認定証」です。限度額認定証は、保険証を発行している健康組合などに申請して発行してもらうもので、医療機関に提示することで、あらかじめ窓口負担額を高額療養費の上限額に抑えてもらうことができます。
手元に十分な貯金がないケースや、入院期間がどれくらいになるか読めないケースであれば、限度額適用認定証は大きな助けになってくれます。ただ、「限度額適用認定証は、申請月の1日付けで発行される」点には注意しましょう。
私の場合、妻が入院したのが2017年12月末で、限度額適用認定証の申請は1月に入ってからでしたから、限度額認定証は2018年1月1日付けで発行されました。ですから、2017年12月入院分については高額療養費の上限を超える金額も含めて支払うことに……。
上限額を超える金額については、後日健康保険組合から高額療養費として払い戻しがなされますが時間がかかります。私の場合も、2017年12月入院分に対する入院費を2018年2月に支払いましたが、払い戻しはまだです。やはり、入院が決まった時点ですぐに限度額適用認定証を申請すべきでした。
産まれた子どもがNICU(新生児集中治療室)へ
子どもが生まれたのは、妻の入院生活にも慣れてきた2月中旬のこと。予定日まではまだ3週間近くあったので予想外でしたが、母子ともに無事だったことに安堵しました。
とはいえ、やはり予定日より早かったため子どもはミニサイズ。普通の新生児のように数日で退院することはできず、しばらく病院で体重が増えるのを待って退院する必要がありました。
ところが翌日。子どもが低体重以外にもいくつかの問題が見つかったことから、離れた場所にある医療センターのNICU(新生児集中治療室)に移送されてしまいました。出産後、やっと看護生活の終わりが見えてきた気がしましたが、なかなか安心させてくれません……。
医療センターで行われた治療内容についてはここでは書きませんが、治療費は1日あたり20万円超。妻の入院費よりもさらに高額で卒倒しそうな金額です。しかし、当時の私は高額療養費制度を認識していたため、それほど不安は感じませんでした。
加えて、「未熟児養育医療制度」というものが適用されるということも知りました。
未熟児養育医療制度は、低体重で生まれた赤ちゃんや、内臓機能が未熟な赤ちゃんが生まれた場合に、医師が入院を必要とすると判断すれば、治療費や入院費の全部または一部を地方自治体が負担してくれるというものです。
ただし、未熟児養育医療制度に申請期限を定めている自治体もある点は注意が必要です。私の場合も、出生後14日以内に申請する必要があり、しかも申請するまでに以下の手続きを終えておかなくてはならなかったので、かなりバタバタでした。
1.名前を決める
2.役所に出生届を提出
3.健康保険組合にて健康保険の加入手続き
4.医師に記入してもらう書面の手配
5.所得証明書の取得
6.住所地を所轄する保健センターに申請書を提出
私はこれらの手続きを期限内に終え、無事に未熟養育医療制度を受けることができたので、子どもの入院にともなう自己負担額も10万円以内に収まりました。高額療養費制度や未熟児養育医療制度がなければ、数百万円の支払いになっていたはず……。
そして現在、妻子ともに退院し体調の経過も順調です。日常を取り戻すことができた今、やはり公的保険制度への感謝を感じずにはいられません。。
家族が入院すると、家事や看護、精神的不安など、少なからずプレッシャーが生じます。公的保険制度を知っておけば、少なくとも経済的なプレッシャーは解消されますので、今は必要のない方も、あらかじめ認識しておくと良いでしょう。