元国税局職員芸人・さんきゅう倉田「あなたの知らない税務調査 前編 ー税務調査のイロハー」
さんきゅう倉田です。僕は今よしもとクリエイティブエージェンシーに所属しているお笑い芸人で、元国税局の職員です。楽しく正しく税を理解してもらうため様々な活動をしています。
昨今、法人の巨額の申告漏れや脱税がニュースでも取り上げられています。「税務調査」というと、テレビでみる大企業への大々的な調査、というイメージがあるかもしれませんが、実は個人事業主なら誰でも調査対象となる可能性のあるのです。
国税局職員時代、100を超える税務調査に関わってきた経験を元に、前後編の2回に渡り、税務調査ついての基礎知識と覚えておきたいポイントをご紹介したいと思います。
前編の今回は、「税務調査とは何か」を紹介します。
>>後編:「元国税局職員芸人・さんきゅう倉田「あなたの知らない税務調査 後編 ー本当にあったこんな話ー」
個人事業主も調査対象となる税務調査
「税務調査なんかないだろう」
「よく分からず申告をして大丈夫だったのか」
「申告書を提出したときはなにも注意をされなかったから問題なかった、ということか」
個人事業になったばかりの方でも、始めてから相当な年数が経っている方でも、誤った知識や認識を持っていることは往々にしてあります。年収300万弱の方でも税務調査が入った経験があるなど、僕自身もびっくりした記憶があります。※詳細は後編にて
そもそも税務調査ってなに
税務調査は、あなたの確定申告が正しいかどうかを確かめるものです。調査であなたの不正や申告のミスが見つかっても、逮捕されることはありません。もちろん、前科もつきませんし、警察に行くこともありませんし、報道されることも基本的にはありません。
確定申告の確度は、確定申告書を見るだけでは分からないので、その元になった書類も確認されます。帳簿、請求書、領収書、納品書、預金通帳、パソコンなどあなたの業務に関するものすべてが対象です。このあたりの基本的なものはどの業種でも共通してチェックされますが、それ以外も見せなければいけません。飲食店であればレジや予約台帳、自動車販売業であれば在庫の自動車、製造業であれば機械・設備も見られるでしょう。
ただ、調査担当者や会社の環境、時間的余裕によって何を見るかは変わります。限られた時間で効率的な調査を行うため、ポイントを絞って調査しています。
税務調査の流れ
実際に調査官があなたのオフィスや自宅に来ることを“実地調査”と言います。あなたに顧問税理士さんがいない前提で話すと、確定申告書に書いた電話番号か国税局のシステムに登録されたあなたの電話番号に電話が来ます。電話番号がわからない場合は、確定申告書の住所に調査担当者が手紙を送ってきます。手紙には、あなたから連絡がほしい旨が書いてあります。
どちらの場合も、調査をしたいので日程を調整したいという話になり、忙しいので1ヶ月後になってしまいますとか、3ヶ月は無理です、と言って先延ばしにしても「今回はやめておきましょうか」とはなりません。無論、断ることもできません。以前、長期の海外出張や入院する予定があるとの話がありましたが、もちろん後日調査を行いました。
約束をすると、朝9時か10時から、あなたの事務所で調査が行われます。最近は、「簡易な接触」というものを増やしているようで、調査担当者がやってくるのではなく、資料を持ってあなたが税務署に行くパターンもあります。
このとき、確定申告書や預金口座のお金の動きなどから判断した、必要な書類を請求されます。領収証や請求書、預金通帳など都度変わりますが、それらを預かってじっくり見ることもありますし、否認の証拠のコピーを取ったら返してくれることもあります。
税務調査は何日間に及ぶのか
個人事業者であれば、調査日数は半日から1日が多く、その後は電話や来署での対応となります。ぼくの知り合いの俳優さんは、まともに申告していなかったため半日×4回の調査を行われたそうです。また、あなたは参加しませんが、あなたの取引先に反面調査をすることもあります。
※反面調査とは、調査先で確認した資料や発言が正しいかどうかを、取引先に出向いて確認すること
税務調査の対象はどうやって選んでいるか
調査対象者をどのように選ぶかは書けないのですが、市販されている書籍によると、売上が伸びたり、売上が伸びたのに所得は伸びていなかったり、交際費が異常に多かったり、タレコミがあったり、4年目だったり、申告書を見ただけで明らかに誤っていたりすると、調査の確率は上がるそうですのでしっかりと正しい申告を心掛けましょう。
また、最近の傾向としては、社会的波及効果の高い事案や流行りの業種、消費税の還付を行っている人への調査が活発になっています。具体的には、太陽光関連や仮想通貨、海外の業者と輸出取引を行っている方が該当します。
さらに、今まで個人課税部門の職員が少なかった都内の税務署では、職員を増やして個人への調査を強める動きもあります。
調査はどのくらいの件数と人数が対象になっているのか
所得税の年間調査件数はおよそ64万件で、個人事業者は218万人です。個人事業者だけが調査を受けると考えた場合、29%の確率で調査が行われます。ただ、確定申告書を提出した人は2,200万人おり、個人事業者以外の方にも調査が行われるので、実際の確率はもう少し低くなりますが、それでも個人事業者への調査は多い現状です。
個人事業者はどのような場合に追徴課税をされるのか
税務調査で追徴課税されるには、売上が少ないか、経費が多いなどの理由が必要です。ひょんなことから入ってきた雑収入や現金売上、期末の売掛金などは申告が漏れてしまうことがあります。
また、あなたの事業と関係のない個人的な支払いが含まれている、棚卸商品として資産とすべきなのに仕入とした、減価償却すべきところを一括で損金にした、このような場合は否認されてしまいます。ミスであっても「すみませんでした」では終わりません。過少申告加算税と延滞税で、正しく申告していた場合より納税額は多くなります。
うっかり、あるいは税法を知らなかったことで起こるミス以外に、不正が行われることがあります。売上の除外か架空経費の計上です。納税額を圧縮しようと、節税の範囲を超えて、ルールを破る方が一部に存在するのです。
売上除外は、
「請求書や領収証の控えを破棄する」
「簿外の預金口座に入金する」
「現金売上を記帳しない」
などの方法で行われます。
架空経費は、
「他人名義の請求書や領収証を偽装する」
「取引先に水増し請求をしてもらう」
「領収証の数字を改ざんする」
「架空の従業員を作る」
「領収証販売業者“B勘屋”から領収証を買う」
などの方法があります。
それらに関連して、他人に見せるための帳簿とは別に“裏帳簿”を作成する方もいます。不正が認められれば重加算税を賦課され、より多く追徴課税されます。
税理士がいて、やっと対等に話せる税務調査
税務調査は、税法に則って行われますが、それはみなさんに馴染みのない法律です。税法のプロである調査官がやってきて、書類を見られ法律を駆使してあれはだめこれはだめと言われて対抗できるでしょうか。野球の経験のない人が、大谷翔平の球を打てるでしょうか。まぐれでファールくらいはあるかもしれませんが、ヒットを打つことはないでしょう。
税理士の協力なく税務調査に挑むのは無謀なことといえます。
個人事業者になったら、税務調査の知識は予め習得しておかなければいけません。書籍や同業者からの情報収集を欠かさず、帳簿や確定申告書の作成もなおざりにしてはいけません。また、そのような時間が取れないのであれば、対価を支払って、税理士さんを頼りましょう。
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