住民税の普通徴収と特別徴収とは?2つの徴収方法をわかりやすく解説
住民税と所得税はどちらも給与から源泉徴収されているケースがほとんどですが、住民税については個人が納付しているケースもあります。
今回は、住民税の「特別徴収」と「普通徴収」について解説します。
住民税の徴収方法は2つ
住民税の徴収方法は、には特別徴収と普通徴収の2つがあります。
特別徴収
住民税の特別徴収は、年間の納税額を月割りにした分を給与から差し引き、翌月の10日までに従業員が住んでいる市区町村に納付するという方法です。
普通徴収
普通徴収は、納税者本人が直接市区町村に納税する方法です。
納付回数は年4回で、6月、8月、10月、翌年1月に年間納税額の4分の1ずつを納付します。
給与所得者は特別徴収
住民税の徴収方法はどちらでもいいということではなく、前年に給与の支払いを受けている給与所得者については、4月1日の時点で在籍する会社で特別徴収されることが原則となっています。
特別徴収の流れ
給与を支払っている会社は、毎年1月31日までに従業員の給与支払報告書を各市区町村に提出します。
市区町村は、提出された給与支払報告書をもとに都道府県民税と市町村民税を計算し、5月31日までに特別徴収する税額を会社に通知します。
通知を受けた会社は、決定された納税額を給与から毎月差し引き、特別徴収した税金を翌月10日までに市区町村へ納付します。
所得税と住民税の違い
所得税については、源泉徴収する義務が会社側に課せられているので、何も差し引かないまま給与を支給することはできません。
もち源泉徴収しなければ罰則が適用されます。
しかし、住民税については所得税とは違って源泉徴収の義務はなく、特別徴収をしなくても罰則等がありません。
全国的に進む特別徴収の徹底化
しかし、平成29年度(2017年度)からは全国的に特別徴収の徹底化が進んでおり、令和2年度(2020年度)からは全国20以上の市区町村もそれに追随します。
ただし、市区町村によっては従業員が2名以下なら普通徴収となる場合もあります。
特別徴収が徹底されなければならない理由として、住民税の納付を滞納したり遅延して納付する人が増えてきたことがあります。
普通徴収で納税者の納税を待っているだけでは住民税が回収できず、納税者との連絡もなかなかつかないことから、徴収率ほぼ100%の特別徴収を徹底化する必要性が高まりました。
“特別徴収・普通徴収別の個人住民税の徴収率を調査したところ、特別徴収の徴収率は100% に近い数値となっている一方、普通徴収の徴収率は上昇傾向にあるものの、下表のとおり、特 別徴収の方が高い結果となった。”
<引用元>総務省:特別徴収の推進について
特別徴収の対象外
特別徴収の人は普通徴収を選択できないのが原則ですが、以下の場合は特別徴収の対象外とされ、普通徴収を選択することになります。
・退職・5月末までに退職(休職)予定
・死亡
・休職・長期欠勤
・給与が少ないため特別徴収できない
・給与の支払いが不定期
・別の会社で特別徴収を受けている
年金受給者の特別徴収
老齢・退職どちらの年金受給者についても、住民税が年金から特別徴収されます。
年金の受給に連動して特別徴収されることから、年金受給者の年間の徴収回数は全6回です。
この場合、特別徴収される年の4月1日の時点で年齢が65歳以上で、前年の所得に住民税が課税される人が特別徴収の対象者です。
年金から介護保険料が差し引かれていない人や、住民税の納税額が老齢基礎年金額以上になる人、年金額が低い人については特別徴収されず普通徴収となります。
まとめ
給与所得者の住民税は、対象外の条件に適合しない限り特別徴収されます。
年数回に分けての納税する普通徴収だと1回の納税額が高くなりますが、特別徴収なら12分の1ずつなので月々の負担が軽くなる上に滞納・遅延の心配もなくなります。
住民税は前年度の所得に対して課税される税金なので、徴収される年に所得がないとしても納税しなければなりません。
普通徴収で住民税を納付する場合は、滞納・遅延のないように気をつけましょう。
“延滞金は、納付期限の翌日から住民税を納める日までの期間の日数に一定割合を乗じて算出されます。”
<引用元>経営ハッカー:住民税,滞納するとどうなるの?知っておきたい住民税の基本を税理士が解説します
この記事は、佐原税理士事務所 佐原 三枝子 様に寄稿いただきました。 経営ハッカーでは、記事制作にご協力いただける方を募集しております。 お申し込みはこちらから