個人事業主の源泉徴収をおさらい!対象から計算方法まで丁寧に解説
今まで会社勤めをしていた個人事業主やフリーランスの方が、一番最初に困る税金の一つが源泉徴収ではないでしょうか?今回は個人事業主やフリーランスの視点から、源泉徴収の気をつけたいポイントをおさらいしていきましょう。
[目次] 1) 個人事業主やフリーランスが源泉徴収されるのはなぜ? 2) 対象となる人と対象となる仕事 3) 源泉徴収の計算方法 4) 源泉徴収する方は何をしている? 5) まとめ
1)個人事業主やフリーランスが源泉徴収されるのはなぜ?
源泉徴収とは、対象となる報酬を支払者から受取者に支払う際に、所得税分として一部を控除することです。以下のような流れでおこなわれます。
受取者:報酬の発生事由の提供 ↓ 支払者:税金を控除し(=源泉徴収)、控除後の金額を受取者に支払い ↓ 受取者:税金控除後の報酬額受け取り ↓ 支払者:源泉徴収した税金を税務署へ納付
源泉徴収の理由ですが、税金の徴収を効率的に行うためと言われています。所得税は年に一度、申告と納税を行う仕組みです。源泉徴収によって、所得の発生の都度、概算の所得税を前払いしておけば、税収も安定し、税金の徴収漏れも減ることになります。
税金の徴収が効率的にできればそれだけ税務署の運用コストが抑えられ、税金を使わずに済むことになります。
2)対象となる人と対象となる仕事は?
対象となる人
源泉徴収は、個人事業主やフリーランスであれば事業や規模に関わらず対象になります。以下に見ていくように「どのような仕事か」が重要です。
対象となる仕事
個人事業主やフリーランスで行う全ての仕事について源泉徴収がされるわけではありません。 以下のような仕事が対象になります。
- 原稿料や講演料、デザイン料等
- 弁護士、公認会計士、司法書士等特定の資格を持つ人への報酬
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- スポーツ選手、モデル、外交員などに支払う報酬
- 芸能人、芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬
- コンパニオン、ホステスへの報酬
- プロ野球選手等への契約金
- 広告宣伝のための賞金や競馬の賞金
「謝金」「車代」「日当」など名目は問わず、上記に関連する報酬は全て対象です。国等に払う税や手数料を除き、立替経費も含みます。また、金銭だけでなく、品物で受け取った場合も源泉徴収の対象となります。
3)源泉徴収の計算方法
対象となる報酬に、一定の税率をかけた分が源泉徴収として控除されます。
支払われる報酬が100万円以下
報酬×10.21%
が源泉徴収税額となります。例えば、支払われる報酬が10万円であれば、10万×10.21%=10,210円が源泉徴収税額です。
支払われる報酬が100万超
(報酬ー100万円)×20.42%+102,100円
が源泉徴収税額になります。例えば、支払われる報酬が200万円であれば、(200万円ー100万円)×20.42%+102,100円=306,300円が源泉徴収税額です。
源泉徴収の計算における注意点
- 司法書士・土地家屋調査士・海事代理士については、報酬一件につき1万円を差し引いた額を基に計算します。
- 外交員については一か月12万円を差し引いた報酬額を基に計算します。
- コンパニオン、ホステスへの報酬に関してはは別途規定があります。
- 賞金については、賞金・商品金額から50万円を差し引いた金額に10.21%をかけた金額が源泉徴収税額になります。
- 消費税が含まれている場合は、消費税も含めた金額が対象です。ただし、報酬と消費税が明確に区分されている場合は、報酬のみを対象とすることもできます。
<参考> 請求書に源泉徴収を入れる理由。個人事業主やフリーランサー必見!
4)源泉徴収する方は何をしている?
今までは源泉徴収される側をみてきましたが、源泉徴収する側は何をしているのでしょうか。
報酬を払う際、総額から源泉徴収分を控除して取引先に払います。控除した分は「受取者の所得税」です。これをいったん源泉徴収した側が「預っている」状態になります。
預った所得税は、報酬を支払った月の翌月10日までに税務署に納付します。受取者の所得税を支払者が納付する仕組みです。納付をもって、預りの状態は解消されます。
もし源泉徴収した側がこの所得税を納付しなかったらどうなるのでしょうか?その場合、納付の義務は源泉徴収した人だけにあります。源泉徴収された側は、源泉徴収をもって納付したものとして、確定申告が可能です。
年が明けると、支払者、つまり源泉徴収する側の事業者は「支払調書」を発行します。前年一年分の報酬額と源泉徴収額を記載したものです。支払調書は受取者と税務署の両方に提出されます。支払調書は確定申告の際に用います。
5)まとめ
以上が個人事業者やフリーランスと源泉徴収のポイントになります。所得の種類によって調整した報酬額の、10%~20%程度が所得税として源泉徴収され、支払者によって税務署に納付されます。
源泉徴収の対象になる場合は計算を反映した請求書を作成しましょう。上記以外にも、法人や会社員に対する源泉徴収の仕組みがありますのでそれらと混同しないようご注意ください。