あまり知られていない、所得税を振替納税する方法|メリット・デメリットまとめ
振替納税という言葉を聞いたことはあるでしょうか?振替納税は所得税や個人事業者に係る消費税の納税について利用される制度です。今回は所得税に係る振替納税とはどのような納税制度か、そのメリットとデメリットについて解説したいと思います。
1)振替納税とは?
振替納税とは簡単に言うと、税金の納税方法を言います。 現在日本における所得税の納税方法には①現金に納付書を添えて納付する方法、②電子納税する方法、③延納、そして④振替納税があります。 このうち、①と②はよく利用される一般的なものですが、③と④については普通は聞きなれない納税方法だと思います。とりわけ③の延納については、振替納税を説明する際によく引き合いに出されるので、③延納についても今回解説します。1. 所得税の延納
延納とは、通常の納付期限までに納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの税額の納付をおよそ2ヵ月半先まで延ばすことができる制度のこと。 ただし、延納期間中は納付を延期したい金額に対して年1.8%の利子税がかかります。(なお、延納は贈与税にもありますが贈与税の場合は原則6.6%の利子税がかかります。)2. 振替納税
振替納税とは、指定した金融機関の預貯金口座から自動的に引き落とされて納税が行われる方法。電気代やガス代など公共料金の自動振替と似ています。一度手続きを行うことで、次回以降は自動納付となるので上記①、②のように自ら納付の手続きをする必要がなくなるという訳です。 振替納税にすると納付期限が、通常の納付期限よりもおよそ1ヵ月先になります(但し、1ヵ月先になるのは確定申告時のみ)。また、振替納税に加え、延納も利用することができます。ただし、この場合の納付期限は通常の納付期限の2ヵ月半先までなので注意が必要です。 以下、平成26年度の所得税を例にとり、納付期限を時系列で図示するので参考にしてみて下さい。 〈参考〉 国税の納付手続き(国税庁) 振替納税のお勧め(国税庁)
2)振替納税のメリットとは?
振替納税をすることのメリットとしては、以下のものが挙げられます。
1. 納税の先送り
振替納税を行うと納税を先送りすることができます。しかも延納のように「2分の1以上の額の納税」や「年1.8%の利子税」を支払う必要がありません。
この仕組を活用すれば、単純に1ヵ月分の資金繰りに余裕が生まれることに。資金繰りが大きな問題となる方にとってこれはありがたい制度です。
2. 手間が省ける
振替納税を利用すると指定の口座から自動的に納税が行われます。わざわざ金融機関に出かけて行って納付する必要がなくなる為大変便利です。金融機関で長い時間待って納付を行う、という煩わしさから解放され、無駄な時間を減らす事ができます。
3. 延納と併用が可能
振替納税を利用するのはいいが、期限までに全額納める余裕がない場合は延納も利用することが可能です。利子税も振替納税の期限からの計算となるため、抑えることができます。
3)振替納税のデメリットとは?
ただしもちろん、振替納税にはデメリットもあります。よく挙げられるものは以下。
1. 残高不足等で延滞税がかかる可能性がある
振替納税を利用すると、指定された口座から自動的にお金が引き落とされるため、もし残高不足等になった場合は納期限の翌日から延滞税がかかります。そのため事前に預金残高を確認しておく必要があります。
2.転居により所轄税務署が変わった場合は再度届出が必要
もし、転居することにより所轄の税務署が変わった場合は忘れずに振替納税の手続きを行う必要があります。仮に忘れていた場合は、自動引き落としと勘違いし、気づいた頃には督促状が届き延滞税を払わなければならないという事態になりかねないので注意しましょう。
※ちなみに平成27年1月1日~平成27年12月31日の延滞税の割合は以下の通りとなっています。 納期限の翌日から2月を経過する日までの期間…2.8% 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後…9.1%
<参考> 延滞税の割合(国税庁)
4)振替納税の手続方法
口座振替依頼書に住所、氏名、金融機関名、預貯金口座名などを記入し、預貯金通帳に使用している印鑑を押して、納税地を所轄する税務署か預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書に記載した金融機関に提出してください。
なお提出期限は振替納税をしたい所得税の納付期限までとなっています。ですので、平成26年分所得税の場合は平成27年3月16日までになります。
また、振替納税は基本的に予定納税にも適用されるので、予定納税の時に振替納税を行いたくない場合は、依頼書に記載のある部分を二重線で抹消しておいて下さい。
<参考> 振替納税手続(国税庁)
5)振替納税の取りやめ方法
振替納税の取りやめ方法には、実はすこし問題があります。振替納税を始めた後は取りやめする事を前提にしていないのか、国税庁のHPにも取りやめ専用の届出書のフォーマットは存在しません。
但しよく見ると、口座振替依頼書の下の方の約定4に「この口座振替契約を解除する場合には、私から(納税貯蓄組合長を経由して)指定した金融機関並びに税務署あて文書により連絡します。」と一文が記載されています。つまり、口座振替依頼書に「取りやめ」と記載し、所轄の税務署に提出すれば取り辞めることができるのです。
<2016/02/01 追記>
大阪国税局が振替納税の取りやめ申出書のフォーマットを用意しているようです。「大阪国税局独自の様式」となっておりますが、大阪の国税局管轄外のエリアでも同様のフォーマットで良いとする場合があるようです。こちらのフォーマットが利用できるのか確認してみるのも良いでしょう。まとめ
いかがだったでしょうか?振替納税は納税の手間を省いてくれる便利な制度です。まだ利用されていない方は一度ご検討されてみてはいかがでしょうか?
但し、記載の通りデメリットもあります。預金残高に余裕がなく、納税前に毎回確認するのが面倒と思われる方は、電子納税でも十分と思われますので、ご自身にあった方法を選んでください。
この記事は、UKトラストグループ様に寄稿いただきました。 経営ハッカーでは、記事制作にご協力いただける方を募集しております。 お申し込みはこちらから