連結会計とは?連結会計の意味とルールを詳しく解説
上場企業は、周知のように連結会計における世界的な今後の動向を踏まえ、国際財務報告基準(IFRS)の適用も視野に入れる必要があります。現状、上場会社で一定の要件を満たす会社についてはIFRSを任意適用していますが、今後の日本基準を世界に合わせる基準統一が課題となっています。そこで、今回は連結会計の意味やその基本ルールについて詳しく解説していきます。
連結会計の基本
連結会計とは
連結会計(Accounting of Consolidated Financial Statements)とは一般的には、上場企業に義務付けられている会計処理として認知されています。(これ以外に、非上場企業においては、資本金5億円以上の大会社などが連結会計を行う必要があります。また、IPOを目指す企業や、上場企業から出資を受ける可能性のある企業などは連結会計について知っておく必要があります。)
連結会計のルールを決める金融庁所管の企業会計審議会が策定した、「連結財務諸表に関する会計基準(通称 連結会計基準)」によると、連結会計とは支配従属関係にある2つ以上の会社からなる企業グループを単一の組織体とみなして、親会社が当該企業集団の財政状態及び経営成績を総合的に報告する連結財務諸表を作成し、開示するものであるとしています。
つまり、上場企業を対象とする連結会計は、投資家が正確に投資判断を行うために企業経営の実態を正確に報告することを目的としているのです。
連結会計で作成する連結財務諸表とは?
連結財務諸表の内訳は、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、そして連結附属明細表となっています。
連結会計の対象となる親会社と子会社
支配従属関係において、支配する側の「親会社」とは、連結対象の他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる意思決定機関)を支配している企業をいい、「子会社」とは、支配される他の企業をいいます。
連結会計が行われるようになった背景
連結会計の起源は、19世紀の米国鉄道会社の連結会計採用に遡ります。19世紀前半から本格化していく鉄道会社の創業において、会社法が州ごとに違う米国では、持ち株会社を設立し、各州の鉄道事業を管理する必要がありました。そのために、持ち株会社の傘下にある地域鉄道子会社を連結会計(連結損益計算書)により経営していったという背景があります。さらに、19世紀後半になると鉄道会社の乱立により、経営が悪化する会社も増え、経営統合が必要となってきました。その際に市場からの資金調達を行うために、企業グループの実態を投資家に説明する必要が生じ、グループの資産状況を開示する必要も出てきました(連結貸借対照表)。
このような鉄道会社の連結会計が、USスチールや、GEに波及し、後々米国における上場会社における連結会計が一般化してくるという流れになっていきます。
日本においては、1965年に山陽特殊製鋼が架空子会社を使った売り上げ計上などの巨額の粉飾決算により倒産する事件が発生したことから、正確な企業グループの会計報告のための連結会計が求められるようになりました。
その後、1975年に企業会計審議会による「連結財務諸表の制度化に関する意見書」を踏まえ、1977年度決算からその開示を義務づける制度化がなされました。これにより、1978年3月期決算から、連結財務諸表の開示が要求されるようになったのです。しかし、当時の位置づけは個別財務諸表の付属書類というものでした。
やがて、日本の証券取引所もグローバル化し、海外投資家の参入が増えたことで本格的な連結会計に対する要求が強まってきました。そこで、日本の金融システムを世界標準に近づける金融ビッグバンにともなう会計制度改革(会計ビッグバン)を行い、1997年(平成9)に企業会計審議会から「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」が公表されました。そこで、1999年3月期決算から、企業が開示する財務諸表の中心に連結財務諸表を位置づけるようになったのです。
連結会計はなぜ必要なのか?
上場会社の経営陣は、常に株主からの業績を高め、株価を上げることへの圧力にさらされています。そういった中、グループ経営を行っている会社であれば、親会社は子会社に対し支配的な地位を有しているため取引に関して指示ができる関係にあります。
このため例えば、親会社が見かけ上の事業計画達成を目的として、子会社に在庫を買い取らせ、売り上げを立てるといった不適切な取引が行われる可能性が出てきます。
そこで、投資家が正確な投資判断をするためには財務諸表を親会社単体で見るのではなく、連結グループ全体で見なければ実態がわからないという理由から連結会計が用いられるようになりました。
連結対象企業とは
連結会社を判断するときの「支配力基準」
連結会計の重要なポイントは、連結の範囲を確定する際、形式的な「持株基準(持株比率基準)」でなく実質的な「支配力基準」を設けたことです。支配力とは実質的に他の会社の経営の意思決定をコントロールできる力であり、親会社の支配力がどこまで及びうるかによって、当該グループにおける連結を判断します。
子会社連結の対象となる企業についての判断方法
支配力基準をもとにした連結対象企業の判断は以下のような考え方によります。それは親会社(親会社になり得る会社、以下同様)の意向により、議決権を含めてどの程度支配力が行使できるかという見方です。
(1) 親会社が当該会社の議決権の過半数を所有している場合
親会社単独で議決権の所有割合が50%を超えると連結子会社となります。
親会社が所有する議決権の数
議決権の所有割合=
行使し得る議決権の総数
(2)親会社の議決権が過半数に満たないが子会社と判断される場合
以下のような条件から子会社の判断を行います。
①緊密者、同意者が議決権を行使できる
親会社が所有している議決権に加え、出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより親会社と同一の意思の議決権を行使すると認められる者(緊密者)及び親会社の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者(同意者)が所有している議決権とを合わせた所有割合によって判断します。
親会社の議決権の数+緊密者の議決権数+同意者の議決権数
議決権の所有割合 =
行使し得る議決権の総数
②親会社の役員、使用人が対象企業に在籍し、意思決定機関に影響力を行使できる
親会社の役員、親会社の業務を執行する社員若しくは使用人である者又はこれらであった者で、親会社の意向に沿って取締役としての業務を執行すると認められる者の員数が、取締役会の構成員の過半数を占めている場合など。
③親会社が経営方針を決定できる契約関係がある
他の企業の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在するなど。
④親会社が金融面で支援をしている
当該企業の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているもの)の総額の過半について融資(債務の保証及び担保の提供を含む。)を行っているなど。
※親会社の持ち株比率が50%未満の子会社の個別の判別は簡単ではありませんのでIPOを目指す非上場企業が、実際の連結判断を行う場合には監査法人のショートレビューなどで確認する必要があります。
関連会社の連結対応処理は持分法を適用
次に、「関連会社」とは、形式的に20%以上の議決権を所有している会社をいいます。しかしながら、20%未満(15%以上)であっても、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、財務、営業、事業の方針の決定に重要な影響を与えることができる会社であれば、関連会社とみなされます。なお、関連会社に対する議決権の保有は投資の位置づけになります。
関連会社の連結処理に適用される「持分法」とは、投資会社(親会社)が被投資会社(当該会社)の資本及び損益のうち親会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法を言います。
連結会計の実施方法
連結原則 連結財務諸表作成における一般原則
連結会計は、以下の原則に従って実施されなければなりません。
真実性の原則
連結財務諸表は、企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関し
て真実な報告を提供するものでなければならない。
基準性の原則
連結財務諸表は、企業集団に属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければならない。
明瞭性の原則
連結財務諸表は、企業集団の状況に関する判断を誤らせないよう、利害関係者に対し必
要な財務情報を明瞭に表示するものでなければならない。
継続性の原則
連結財務諸表作成のために採用した基準及び手続は、毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
連結財務諸表作成時の大まかな流れ
一般的な連結財務諸表の作成手順としては、
- まず連結対象企業単体の財務諸表を作成
- グループ内各社の財務諸表を合算
- 必要な会社間取引の相殺消去調整
- 最終的にグループ内の企業群を単一の企業と見なした形の財務諸表を作成
となります。ここで、連結会計の大きな特徴は、連結会社間の取引における相殺処理となります。以下に、上述3.の相殺消去調整の例を挙げてみましょう。
・資本連結
親会社の投資勘定と子会社の株主資本とを相殺消去
・債権債務連結
営業取引による売掛金、受取手形と支払手形、金銭貸借取引による貸付金と借入金
固定資産取引による未収入金と未払金などを相殺処理
・収益連結
連結会社相互の売上、仕入等の相殺消去処理
・損益連結
未実現利益の相殺消去 。連結会社間の棚卸資産や固定資産の売買取引によって発生した損益は、当該資産が連結外部への売却等により実現するまで、未実現損益として残っていますので、これらを消去する必要があります。
非上場企業の連結会計
非上場企業でも連結会計が義務付けられている場合
非上場企業で連結会計が義務付けられているケースとして以下のようなものがあります。
1.上場企業の連結対象子会社となったために行う場合
2.会社法では、下記の会社に対して連結計算書類の作成が義務づけられています。
・大会社と委員会設置会社
大会社とは、資本金5億円以上、又は負債総額200億円以上の会社を言います。また委員会設置会社も対象となります。(会社法328条 第1項・第2項)
・監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社
(会社法327条第5項)
・会計監査人の任意設置を行った会社
(会社法326条第2項)
創業当初から上場を目指して会計監査人を置く会社などがあります。
3.金融商品取引法に規定される有価証券届出書提出会社
有価証券届出書とは、1億円以上の有価証券(株券や社債券など)の募集(新規発行)または売出しを行う際に、有価証券の発行者が提出することが義務づけられている書類のことです。発行する会社の営業状況や事業の内容、および有価証券の発行条件などが記載されています。
非上場企業が管理会計を高度化するため連結会計を行う場合
一般的な非上場企業が連結会計を行うケースとしては次のようなものがあります。
非上場の会社グループを形成している場合
非上場会社にとって、連結会計の実施は、グループ子会社の状況をより正確に把握することで、的確な意思決定に資するものとなります。同一業態の地域子会社、セグメントごとに分けた子会社、製造販売といった機能別子会社といった子会社群の編成はどのようなものであれ連結会計により経営分析が行いやすくなります。
子会社の管理に活用する場合
親会社はグループの会計処理方法を統一することで、子会社の管理能力向上や、人材育成を行うことができます。グループで会計管理能力を上げることにより、金融機関から融資が受けやすくなるといったメリットもあります。
IPOを目指して体制変更を行う場合
監査法人のショートレビューを受けながら、連結会計体制を整える場合
※なお、連結納税という観点もありますが、必ずしも連結会計と同様のプロセスではなく、別物と考える必要があります。
まとめ
もともと連結会計は、上場企業中心に情報開示を行うことが主たる目的ですが、非上場企業であっても、経営に生かして行くことが可能です。単に連結決算書類を作成するだけでなく、そこから経営判断に役立つ情報を収集分析し、経営に活用していくことで連結決算を作成するメリットが出てきます。
参考:連結決算をスムーズに行うには?
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