2016年版 中小企業白書概要を読んでわかった「中小企業経営者の特徴」

税金や財務は「財務省」
教育、文化、スポーツは「文部科学省」
運輸や交通や気象は「国土交通省」
・・・が管轄するのはなんとなくわかる話。
「じゃあ、中小企業は?」
答えは経済産業省。経済産業省は1.資源エネルギー庁、2.特許庁、そして3.中小企業庁の3庁で構成されています。
中小企業庁のサイトを見ると、
中小企業庁設置法第1条の目的である「健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、且つ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立すること」
を任務としているのだそうな。
1文が長くてややこしいですが、要するに「中小企業のパートナーとなる行政機関」という理解で問題ないでしょう。(くわしくはこちら)
その中小企業庁が今年の4月に「2016年版 中小企業白書」を公開していたので、主だったところをピックアップしてまとめてみます。(PDFはこちら)
そもそもなぜこういう白書が作られているかというと、中小企業基本法の中に「政府は、毎年、国会に、中小企業の動向及び政府が中小企業に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない」と決まっているから。そういう義務があるんですね。ちなみに今年で53回の報告書が作成されています。
中小企業と大企業の線引きってどこ?
企業規模は中小企業基本法の定義によって決められていまして、カンタンにいうと「資本金と従業員数」で決まります。
くわしくはこの表をご覧ください。
※画像引用元は「2016年版 中小企業白書概要」
この定義によると、国内には中小企業が380万あり、大企業はわずか1万ちょっと。ほとんどの企業が中小企業に属するわけです。
この白書の中で興味深かったのが「中小企業の経営者の特徴(P22~23)」でして、要点を抜き出すと…。
1.高収益企業の方が、計画的かつ積極的に新たな試みに挑戦する傾向がある 2.中小企業の経営者は高齢化しており、新陳代謝が進んでいない 3.経営者年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まる 4.経営者が交代した企業の方がわずかながら利益率が向上しており、計画的な事業承継が重要
また、稼げている中小企業はおおむね
・自社の意思決定スピードは速い ・全社一体となり顧客の課題解決に取り組んでいる ・経営計画や経営戦略の内容が現場まで浸透している
と回答していますが、「失敗を恐れず、新たな試みに挑戦する考えが根付いている」はあまりできていないと回答しています。うがった見方をすると、失敗を恐れてチャレンジから逃げる企業風土は少なくないということでしょうね。
また、経営者は成長への意識について、
1.売上高を伸ばしていく必要がある 2.雇用を維持・拡大 していく必要がある
と答えているものの、
・成長には、リスクを伴 う行動が必要であ るし、積極的にリスク を取るべき ・積極的に投資して いく必要がある
の2つについてはあまり重視していない様子がうかがえます。
経営者の高齢化はとくに小規模ビジネスで顕著な問題で、この20年間(1995年~2015年)で経営者年齢の分布のピークは47歳から66歳へ移動しています。こんなところにも、高齢化社会の波は押し寄せているんですね。
※画像引用元は「2016年版 中小企業白書概要」
経営者の交代をして若返りを図っている企業は、そうでない企業より経常利益率が高いというデータもあります。
中小企業白書概要(2016年版)は、「経営者が理念を明示し、金融機関等外部専門家と連携しながら、現場の意見を聴いて組織的な経営を行い、成長投資と新陳代謝を進め、稼ぐ力を向上させていくことが重要」と締めくくっています。
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