借りない資金調達!野村、ソニー、メガバンク出身者が仕掛ける「クラウドファクタリング」とは?(前編)
「中小企業の資金調達」と聞いて何を思い浮かべますか?
融資のように「借りる」資金調達ではなく、「借りない」資金調達であるファクタリングという手法が今注目されています。
OLTAさんは、野村證券、ソニー、三菱UFJ銀行、NRI、三菱商事などバックグラウンドの異なるメンバーで結成されたFinTech企業で、『ファクタリング(factoring)』という領域に新しいアプローチで挑戦しています。
今回はOLTAの方々に「ファクタリングはなぜ注目されているのか?」、「起業のきっかけは?」、「多彩なメンバーが集まった理由は?」などを伺いました。
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(聞き手:freee株式会社 金融事業部 木本俊光)
メンバー全員が、はじめからファクタリングに注目したわけではなかった
ーまずは「ファクタリング」について教えてください
(澤岻):シンプルに言うと、「請求書を売ることができるサービス」です。ファクタリングを使えば、取引先からの入金を待っているとき、その売掛金を第三者に売却することできます。
OLTAのサービスを使えば、請求書売却に必要な書類の提出などもすべてオンラインで完結するので、「クラウドファクタリング(Cloud Factoring)」と呼んでいます。
銀行融資や既存のファクタリングサービスと比べても圧倒的に速く、簡単に資金調達できる手段を実現しました。
ー私(木本)はいままで「ファクタリング」を知りませんでした。メンバーの皆さんは入社前からご存知でしたか?
(武田):私はソニーにいて中小企業の方と取引はありましたが、ファクタリングについては全然知りませんでした。澤岻から聞いて存在を知り、ソニーの財務部の知人に実態をヒアリングをしたりして、非常にニーズがある領域だと確信しましたね。
(岸田):私自身もファクタリングって全然知らなくて、もともと大手外資IT企業 で Womenwillっていう働き方改革の活動をしていたので、FinTech自体すらあまり詳しくなかったです(笑)。
ただ、私がやってきた活動でも、日本の中小企業が抱えている課題って本当に多いと感じていて、その世界を変えないと日本自体が衰退していくなと思っていました。OLTAのサービスなら、よりダイレクトにソリューションを提供できるサービスだと思いジョインしました。
ー様々ですね。メガバンク出身の歳森さんは、もともとファクタリングに詳しかったのですか?
(歳森):「ファクタリング」という方法は知っていました。前職の銀行のグループ会社にもファクタリング会社はありましたし、大企業向けの一括ファクタリングや、保証ファクタリングは知っていたんです。
ただ、中小企業向けの買取ファクタリングっていうのは、ほとんどやっていなかったので、詳しくは知らなかったですね。
OLTAが「クラウドファクタリング」にたどり着くまで
ー「ファクタリング」は金融業界では従来から存在した…と。では、なぜOLTAが「クラウドファクタリング」に挑戦するに至ったのですか?
(澤岻):前職の野村證券をやめて、お金に関する事業で起業したいと思って、起業準備で1年くらい事業アイデアを検討してきました。4つくらい事業アイデアがあったのですが、その中の1つが「ファクタリング」だったんです。
ー複数の事業アイデアの中から、なぜファクタリングの事業にしようと思ったのですか?
(澤岻):金融業界に身を置いていて感じていたことなんですけど、法人・個人のユーザーにちゃんと金融サービスが届いているかというとまだまだ課題がありました。
例えば、証券業界でいうと「貯蓄から投資」という課題があって、個人投資家のお金が株式市場などに十分に向かっていない。そこを突き詰めて考えると、ユーザー側の視点に立ったサービスができていないからじゃないかって思っていたんです。
ファクタリングの領域に決めた理由は、前職の野村證券で上場企業の資本政策や資金調達に携わっていた経験が背景にあります。
大企業であれば、直接金融や間接金融、さらには流動化などといった様々な資金調達手段がある中、適切なタイミングで適切な資金調達手法を「選ぶ」ことができます。しかし、中小企業は銀行借入への依存度が非常に高く、資金調達手段を「選ぶ」ことはおろか、最悪の場合、唯一の選択肢である銀行借入ですら困難になる場合があります。
そのような中小企業が日本全国に多数あることを知り、「中小企業が銀行借入だけに頼らない選択肢をつくること」に大きな社会的インパクトがあると思って、クラウドファクタリングを立ち上げようと決意しました。
ただ、その段階ではプロダクトも、お金も、審査モデルもなく、事業アイデアしかありませんでした。ファクタリングという事業アイデアを確かなプランに変えていくために、ベンチャー支援プログラムに参加しようと思ったんです。
FinTech事業をやるならMUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)のアクセラレータープログラムかなと思い、思い切って受けてみたんですが、採択されたので、それをきっかけに創業しました。
ーその時、アクセラレータさん側のメンターが歳森さんだったんですよね?
歳森:そうなんです。
メンターとして担当者に選ばれて、100社以上アイデアの中で一番面白いと思ったのがOLTAのサービスでした。
もちろんメンター期間中はまさか自分がOLTAに入るとは思っていませんでしたが、プログラムを通じて、今まで見えていなかった世界が実はとても大きいのだと思い、自分もそのチャレンジに貢献したいと思ってジョインを決意しました。
中小企業向け金融領域のサービス設計を変えていくのは大きなやりがいある
ー皆さん、このファクタリングのビジネスをやってみて、やる前と違ったことはありますか?
(歳森):銀行から見えていた中小企業向けの金融の世界とは全然違いますね。ユーザーにマッチしたサービスが提供できていると思っています。事業開発をしていても、中小企業の周りにいる税理士・会計士の先生、他のサポートしている方たちに事業説明をすると、「今までなかった非常にいいサービスだ」と言っていただけますね。
(岸田):私が入社する前はファクタリングのことを何も分からなかったので、新しい発見ばかりですね。知れば知るほど良いサービスだなと思っています。
入社後、中小企業の経営者500名に対するアンケート調査を行ったところ、ファクタリングって実際ほとんど知られていませんでした。
この0を1に変えるだけで、凄く変わると感じていて、マーケティングしがいがあるなと思っています。
(武田):私は新卒では金融を選ばず、メーカーのソニーに就職しましたが、金融の領域って優秀な人達が就職しているので、サービス面でも完成された世界なのかなって思ってました。でも、実際にはレガシーな部分も多く、特にこの中小企業向け金融の領域は、サービス設計もまだ手付かずなところばかりでした。そこを変えるのは非常にやりがいあるなと思っています。
バックグラウンドが異なるメンバーが感じるファクタリングの価値とは?
ーOLTAさんにはバックグラウンドが異なる人が集まって働いていますが、そこで気づいたこと・感じたことはありますか?
(武田):普段オフィスで会話していても、自分が今まで経験してきたことと違った意見がたくさん出てきますし、凄く刺激的ではありますね。銀行出身者だけで作ったサービスとも、IT・エンタメ系の企業の人だけで作ったサービスとも違う、上手くマッシュアップされてできあがるものが我々のプロダクトの強みかなと思っています。
(澤岻):色んなスペシャリティーを持った人が、同じ目的のもとに集まってやっていて、それを上手くチームアップさせていくのが大切だなと思っています。僕自身トラディッショナルな組織にいたのもあるんですが、より皆が目的を達成するために柔軟に働き方も変えていかないといけないかなと思ってやっています。
ーみなさんがジョインした理由もそれぞれ違いますよね?
(澤岻):思いはバラバラです。僕だと調達手法の多様化によってマーケットが変えられると思っています。歳森だと、銀行から見たときのビジネスインパクトの大きさやポテンシャルを感じだというところです。武田は、そもそもビジネス構造としての歪さにチャンスがあるのではと。岸田に至っては、地方に対する社会的インパクトなどですよね。
それぞれ見方が違って惹かれる部分は違いますが、ゼロベースでものごとを考えてファクタリングに向かっていることは共通してますね。
ー逆に共通点は感じますか?
(澤岻):この4人もそうですが、先入観にとらわれると「えっ」と思ってしまうけれども、ゼロベースで考えればとてもチャンスがあることに気づく人が集まっています。
ファクタリングの再構築は、ある意味既存の金融に対して一石を投じるものです。そこに集まれるという意味でいうと、ハック思考をもっている人というのも共通点でしょうか。
ーありがとうございました。後編では、既存の金融に一石を投じる資金調達、OLTAの特徴や強みを、金融や会計のプロと一緒に紐解きます。
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