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ESG投資とは?経営改善に活かす企業のESG投資への対応

経営ハッカー編集部
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ESG投資は、近年注目を集めている株式や投信への投資方法です。機関投資家の関心も高く、欧米諸国などを中心にESGを考慮した投資が盛んに行われるようになってきました。年金基金などの株式の長期保有をしてもらえる投資家の獲得は上場企業にとって重要な課題です。また、非上場企業においても、ESG課題への対応は意識して取り組む必要があるものです。今回は、企業にとってのESG投資のトレンドを企業経営にどう生かすかという観点から考えてみます。

目次

    ESG投資とは

     ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つを考慮に入れた投資方法のことを言います。元は2006年4月、当時の国連事務総長コフィ・アナン氏が、ESGに配慮した責任投資を行うことなどを宣言する国連責任投資原則(PRI)を、金融業界に向けて発表したことがきっかけとなり、ESG投資が注目されるようになりました。PRIへの署名機関数は、2018年の時点で1905機関に上っています。(※)

    ※PRI「Annual Report 2018」

    ここでいう環境(Environment)とは、環境面への配慮につとめること、社会(Social)とは、社会問題への解決につとめること、企業統治(Governance)とは、コーポレートガバナンスの充実につとめることです。具体的に、ESGに関する課題とは以下のようなものを指します。

    環境に関する課題 社会に関する課題 ガバナンスに関する課題

    気候変動やCO2の排出

    大気汚染・水質汚濁

    生物多様性

    森林伐採

    エネルギー効率化

    廃棄物管理

    水不足

    顧客満足度

    データ・プライバシー保護

    ジェンダー・ダイバーシティ

    従業員満足度

    地域のつながり

    人権尊重

    労働基準

    役員会構成

    監査委員会の構造

    贈収賄

    役員報酬

    ロビー活動

    政治献金

    内部通報制度

    CFA Insutitute(2015)” Environmental, Social, and Governance Issues in Investing ~A Guide for Investment Professionals”pp.4より筆者訳

     

    PRIでは、投資判断をする際、上記のような環境面・社会面・企業統治の課題に対する企業の取り組みを考慮することが提唱されています。
     
    ESG投資は、短期的な利益を追求するのではなく、中長期的な視点に立って、企業を評価することに重きを置いていることが特徴です。これまで投資商品はリスクとリターンの2つの軸で評価されていましたが、ESG投資により「環境・社会課題への取り組み」というもうひとつの評価軸ができました。

    ESG投資が注目されるようになった理由

    ESG投資が日本で知られるようになったのは、2015年9月に日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名をしたことがきっかけです。PRIは国連環境計画(UNEP)と国連グローバル・コンパクト(UNGC)がイニシアチブをとり、ESGの推進を「投資家の取るべき行動」と定義したものです。
     
    その後、2017年7月にGPIFがESGに取り組む企業の国内株式を対象としたインデックスを発表し、そのインデックスを用いた運用を1兆円規模で始めたことにより、一層ESGが注目されるようになりました。

    2019年4月にはESGの運用残高が3350兆円に

    ESGの要素を加えた運用は中長期的に高いリターンが得られるとの学術発表もあることから、現在では運用残高が世界的に上昇しています。日本でも、ESG投資が全体残高に占める割合が2016年から18年にかけて3.4%から18.3%にアップし、投資残高が欧米に次ぐ世界3位となりました(※)。これは、日本がPRIに署名して以降、国内でESG投資に対する認知度が高まったからだと考えられています。

    ※GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT ALLIANCE「2018 GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW」pp.8-9

    ESG投資を促進するためには変化するステークホルダーへの対応が必至

    ESG投資を今後ますます誘発するためには、環境問題や社会問題、人権問題に対する消費者の意識の向上、地域貢献への関心の高まりから、ステークホルダー自体が変わってきていることを認識する必要があります。すなわちステークホルダーの変化に戦略的に対応し、しっかりとIRを行うことで、投資家の評価を高めていく必要があると言えます。それではステークホルダーへの対応はどのようにすべきでしょうか?

    消費者はグリーン消費・エシカル消費に関心が高まっている

    環境問題への関心が高まる中で、環境に配慮された商品・サービスを優先的に購入する「グリーン消費」に興味を持つ消費者が近年増加しています。2017年11月に行われた消費者庁の調査によれば、「商品やサービスが環境に及ぼす影響」について「常に意識する」「よく意識する」「たまに意識する」が合計78.2%を占めました(※)。
     
    また、児童労働や動物実験、環境破壊等に関与していない企業の製品を購入する「エシカル(倫理的)消費」と呼ばれる消費行動の普及啓発に消費者庁が力を入れていることもあり、エシカル消費にも関心が高まっています。
     
    (※)消費者庁「『平成 29 年度消費者意識基本調査』の結果について」pp.9

    このため、例えば飲食業であればプラスチックを使わないストローの使用といったことを実践し、IRしていく必要があります。

    職場環境の改善・生産性アップへの取り組みへの対応

    日本はよく生産性が低いと言われていますが、仕事へのエンゲージメントが低い中で、従業員に長時間労働やサービス残業を強いる企業が多かったことがネガティブな企業評価の原因になっていたと考えられます。2019年4月1日から働き方改革が法制度として始まったこともあり、職場環境の改善や多様な働き方を受け入れることで、実際に従業員のモチベーションを上げ、生産性を高めて投資家に対してイメージアップを図っていくことが必要です。

    サプライチェーンにおける環境・人権問題への対応

    昨今は世界中から資材や部品を調達できるようになってきたことから、サプライチェーン上の環境問題・人権問題にも注意を払う必要が出てきています。たとえば、2017年には、現在建設中の東京オリンピック会場の施設に、森林破壊や人権侵害のおそれがあるマレーシア産の木材が使用されていることが発覚しました。その後、海外の専門家が来日して日本の企業に対応を迫るという事態となりました。したがって、調達活動にも十分な調査が必要となっています。

    新興国におけるインフラ整備・国内における地方創生貢献へ期待

    海外の新興国では、上下水道やIT環境、金融サービスの未整備や、環境汚染の深刻化などが課題となっています。また、国内でも修理の担い手不足によるインフラ設備の老朽化や、限界集落・地域医療の崩壊などが大変な問題となっています。そこで、企業のもつ経営資源を有効活用し、事業を行っている地域への貢献も必要となってきています。

    投資家のESG投資の手法を知る

    世界のESG投資額の統計を集計しているGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)という国際団体によれば、ESG投資には7つの戦略(手法)があるといいます。ここでは、その7つの戦略と昨今の主流とされている戦略の変化について解説します。企業は投資家の投資戦略を理解したうえでESG課題に対応する必要があります。

    ESG投資の7つの戦略とは

    ESG投資の戦略は、次の7つに分類されますが、これらは重複して用いられることも少なくありません。特に、上の6つと7番目の「エンゲージメント・議決権行使型」は同時に使われることも多くあります。

    ネガティブスクリーニング 武器やギャンブル、たばこなど、倫理的でないとされる特定企業を投資先から除外する戦略のこと
    ポジティブスクリーニング 同じ業界の中でESG評価が高い企業に投資する戦略のこと
    規範に基づくスクリーニング ESG分野での国際基準に照らし、基準に合っていない企業を除外する戦略のこと
    ESGインテグレーション型 財務情報だけでなく非財務情報も含め総合的に分析をする戦略のこと
    サステナビリティテーマ投資型 サステナビリティを前面に謳っているファンドへ投資する戦略のこと
    インパクト投資型 社会問題や環境に貢献する技術・サービスを提供する企業に対して投資する戦略のこと
    エンゲージメント・議決権行使型 株主総会において株主が企業に対してESGへの配慮を積極的に働きかける戦略のこと

     

    主流はネガティブスクリーンからESGインテグレーションへ

    上記7つの戦略の中で、従来主流とされていたのはネガティブスクリーンでした。しかし、現在は財務パフォーマンスだけでなく非財務情報も含めた総合的な判断が必要という考え方に変化していることから、主流はネガティブスクリーニングからESGインテグレーション型にとって変わりつつあります。

    ESG経営のために企業が取るべき3つの対応とは

    ESG投資を呼び込むために、企業はどのように対応すればよいのでしょうか。ここでは企業が取るべき対応策を3つあげて解説します。

    自社にとって重要度の高い社会課題を特定

    まず、自社の事業に近い分野の社会課題を探し出し、重要度の高い課題として特定することが必要です。当然ながら1つの企業ですべての社会課題を解決できるわけではありません。また、事業を継続するためには収益を上げていかなければならないため、収益を上げながら同時に課題解決にもつながるようにしなければなりません。効率的な社会課題の解決を目指すためには、ある程度取り組む分野を絞りこむことが必要です。

    社会課題に対する短・中・長期の対応戦略を考える

    取り組むべき社会課題がフィックスしたら、それらの課題に優先順位をつけ、短期・中期・長期でのESGに関する対応戦略を考えましょう。たとえば短期的には業務改善ツールの導入やサプライチェーンの見直しなど、中期的には社会問題や環境問題を解決する商品・サービスの開発や地域貢献活動など、長期的には新興国の課題解決やCO2削減などのような目標を設定します。

    ガバナンス・情報開示を強化

    上場企業はグローバルな視野を持ち、本業における社会課題解決に向けた中長期的な取り組みを推進し、企業経営にも反映することを企業統治(ガバナンス)に組み込むことが求められています。そのためには、取締役会やリスク管理委員会などに監視機能を持たせるほか、アドバイザリーボードの設置や中長期的ビジョンの策定、具体的なアクションを起こすためのKPIの設定、従業員へのモチベーション向上のための人事評価制度の整備なども併せて行わなければならないでしょう。
     
    また、企業が環境・社会課題に取り組んでいても、それがオープンな情報となっていなければESG投資の呼び水にはなりません。ESG投資を呼び込むためには、投資家が求める情報の積極的な開示が必要です。情報は財務情報だけでなく、ビジョン・戦略・KPI・目標・マネジメント体制といった非財務情報も開示するのがポイントです。
     
    参考:コーポレートガバナンスとは?IPO後に企業が負うべき公器としての責任

    非上場企業の経営におけるESGの活用

    ESG対応は、株式投資の対象となる上場企業だけが義務付けられているものではありません。非上場企業でも、ESG対応を行わなければならない場合や、行ったほうが良い場合があります。

    ①上場している取引先からのESG対応への要請があった場合

    上記の流れを踏まえ、サプライチェーン上にある非上場企業にも何らかの対応が求められる可能性があります。ESG課題が注目されている背景や理由を理解した上で、対応することが必要です。たとえば、安全な労働環境を整える、社内でコンプライアンス研修を行う、社用車を環境負荷の少ない燃費の良い車に変えるといったことは簡単に取り組める対応策です。

    ②上場企業が新規取引先となる可能性がある場合

    上場企業と新たに取引を始める可能性がある場合、取引をはじめるにあたり、取引相手がESG課題に取り組み中長期的に企業価値を高めようとしている企業かどうかは注目すべきポイントです。相手方の会社のウェブサイトでESG課題への取り組みに関する内容を確認し、サイトに記載がなければ直接確認してみましょう。

    ③非上場企業が企業価値を高めるためにESG課題へ取り組みたい場合は、SDGsを活用

    SDGsはESGのテーマを内包しており、かつその取り組みは自社の業績を上げることに直結します。そのため、実効を上げつつ企業価値向上への努力を対外的にPRしたい場合は、SDGsで設定されているテーマやターゲットに対する実践がわかりやすいでしょう。今後、企業がSDGsへいかに真剣に取り組むのか、その戦略を策定して公表することでステークホルダーから評価され、ひいては中長期的な企業価値の向上につながるものと考えられます。

    まとめ

    企業のESGへの取り組みは、中長期的にステークホルダーにとっての価値を上げていくという企業のミッションにかなうものです。ESG投資は今後ますます増えていくことが予想され、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会、地球環境といったあらゆるステークホルダーへの対応を真摯に行っていく必要があると言えます。

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