人事・労務2015年06月03日(水)
全事業者対象!労働保険申告の経理実務を3ステップで解説|経理・税務の基本知識
労働保険申告は7月10日が期限です
労働保険とは、労災保険と雇用保険を合わせたものを指します。毎年一度、7月に労働局への申告と保険料の納付が必要です。申告の考え方と手続きについて見ていきましょう。
1)労働保険とは
【概要】
労災保険と雇用保険を合わせて労働保険といいます。労災保険は、業務や通勤の最中にケガや病気をした場合に補償をするものです。 雇用保険は、失業者に給付される失業保険や能力向上の財源とされ、労働者に万が一があった時に助けてくれる制度です。【対象と負担者】
労災保険はパートやアルバイトを含めた全従業員を対象としています。役員は雇用されていませんので、対象にはなりません。費用は雇い主が全額負担します。 雇用保険は全従業員ではなく、週20時間以上労働し、31日以上の継続雇用が見込まれる従業員を対象とします。雇用された時に65歳以上だった場合を除き、4月1日時点で64歳以上の方は対象となりません。費用は雇い主と従業員が折半で負担します。 〈参考〉労働保険って何?経費になるの?ネットで申告・納付ってどうやるの?2)労働保険申告の仕組み
労働保険申告は、7月10日を申告期限としています。申告の内容は2つに分かれていて、前年4月1日から今年3月31日までの労働保険料を「確定」させることと、今年4月1日から来年3月31日までの労働保険料を「概算」することです。 この「確定」と「概算」を合わせて申告します。今年「概算」で申告したものを、来年「確定」させることになります。概算での保険料と確定の保険料を比べて不足があれば差額を納付し、払い過ぎであれば翌年の保険料にあてたり、還付をうけたりします。 今年から来年の見込みを概算で申告して労働保険料を納付しますので、労働保険は前払いということになります。3)労働保険申告書の書き方
労働保険の申告書は、「確定」を計算してから「概算」をおこないます。 確定は、前年4月1日から今年3月31日までの、労働保険対象者への賃金を集計します。労災保険は全ての従業員が対象ですので、全従業員の賃金を集計します。このとき、各種手当や通勤費も含みます。日当や見舞金などは含みません。 雇用保険は対象者が限られているため、労災保険の計算に用いた賃金総額から、高齢者など雇用保険対象外の方々の賃金を集計したものを除くことで、対象者の賃金を集計するような様式になっています。 保健料率が業種ごとに異なりますので確認し、申告書の料率に記入します。集計した賃金額に保険料率をかけて、労働保険料が確定します。 また、アスベストによる健康被害への救済費用としての「一般拠出金」も加算されます。 概算は、賃金が来年も同額と仮定して、「確定」の数値を用いるのが一般的です。ここでも保険料率を確認し、賃金と保険料率をかけた金額が概算保険料となります。仮定を用いているため、概算ということになります。 概算保険料額が40万円未満の場合は7月10日に全額、40万円以上の場合は7月10日、10月31日、1月31日の3回に分けて納付します。7月の納付時に、昨年払った概算額と今年の確定額の差を加減算することができます。 また、一定額以上の労働保険料があり、労働災害が少ないなどの要件を満たすことで、保険料率を下げることができる「メリット制」という制度もありますので、確認してみるといいでしょう。 最近ではインターネット上で労働保険の年度更新・保険料納付・記帳の全てが完結できるサービスが登場しています。これを使うといちいち手計算をする必要がないので非常に便利です。 http://www.slideshare.net/freee_KK/freeeegov 詳しいご利用方法はこちらをご覧ください。4)まとめ
以上が労働保険申告の考え方と、申告の実務になります。賃金の集計と、対象者の選別、保険料率に注意が必要です。なお、上記は継続している事業に関する内容であり、今年開始された事業の場合は別途規定がありますのでご注意ください。経営ハッカーでは、記事制作にご協力いただける方を募集しております。 お申し込みはこちらから