企業年金制度3種類の違いは?確定給付企業年金から確定拠出年金まで徹底解説
企業年金制度の種類についてご存知でしょうか?厚生年金はなんとなく聞いたことがあるけど、その他はほとんど聞いたことがないという方が多いのかもしれません。
今回はそんな方のために、企業年金の3種類の企業年金を徹底解説します。
3種類の企業年金制度と違い
1.確定給付企業年金
確定給付企業年金は、企業年金制度の中で最も「退職金制度」に近いものです。対象者や給付算定式など退職金制度と同じ制度設計が可能。しかし従業員が退職するごとに発生していた、賃金に比べて高額な退職金の支払いを、毎月または毎年の定期的な「掛金」の支払いに代えることでキャッシュフローを平準化できます。
<参考> ・退職金の種類と仕組み 退職金制度の種類と仕組みは?退職金制度を作るとき知っておきたい基本のき
従業員にとっては、退職時に受け取る退職金を分割して受け取る方法が選べます(これが企業年金制度における「年金」です)。また会社が年金資産の運用を行い、積立水準を数理的手法により毎年チェックし、不足が見込まれる場合には会社が追加の掛金を拠出するので、年金資産の運用の結果にかかわらず従業員は約束された給付を受けることができます。
そして、会社に万一のことがあっても年金資産は外部の金融機関において守られます。このように、確定給付企業年金制度は、退職金制度に比べて「受給権の保護」が強化されていることが特徴。
確定給付企業年金は法令上「規約型」と「基金型」がありますが、実態は「基金型」とは後述の「厚生年金基金」が代行返上して移行する際の受け皿であり、そうでないものは「規約型」に分類されます。
2.厚生年金基金
厚生年金基金制度とは、会社が「厚生年金基金」という法人を設立し、その基金が国(実際は日本年金機構など)に代わって厚生年金の保険料(の一部)を収受、記録、年金資産の管理と運用、年金額の裁定(年金額を記録に基づいて確定すること)、年金の支払いといった業務を行うもののことを指しています。
厚生年金基金の目的は、「老齢厚生年金」(65歳以降に支給される厚生年金)の給付を基金が代行しつつ、さらに基金独自の上乗せ給付を提供して加入員の年金額の向上を図ることでした。かつて厚生年金基金が厚生年金本体よりも高い資産運用の利回りを実現できた時代には、その運用の利益の差額分を基金が享受できることが基金を設立するメリットでした。
ところが1990年代後半からはその関係が逆転、メリットがデメリットに転じ、各基金の財政が悪化したために、代行するのをやめて確定給付企業年金「基金型」に移行したり(代行返上)、解散する基金が相次いでいます。
解散する通称「総合型基金」(同業や近接する地域の中小企業が共同で設立した基金)に加入していた中小企業にとっては、解散や基金からの脱退に伴う費用の負担とともに、その後の退職金制度をどうするかが課題になっています。
<参考> ・社会保険の扶養範囲は? 社会保険、扶養の条件は?健康保険と厚生年金の扶養条件をわかりやすく解説 ・厚生年金保険料の計算方法 社会保険料の計算方法をわかりやすく解説
3.確定拠出年金
日本版401(k)とも呼ばれる制度で、一言で言うとさまざまな税制上の特典とともに制約もつけられた証券口座のようなものです。
具体的には、事業主または従業員本人が掛金を個人口座(「個人別管理資産額」)に拠出し、従業員が運用商品を自分の判断で選択して資産運用を行う仕組みです。
主な税制上の特典は以下の通りです。
- 事業主が払う掛金は損金、従業員が払う掛金は全額所得控除
- 運用益は額にかかわらず非課税
- 給付時に一時金を選択した場合には退職所得、年金(分割払い)を選択した場合には雑所得として公的年金等控除の対象となる(なお、確定給付企業年金の場合も同様)
また主な制約は以下の通りです。
- 退職した場合でも60歳までは残高の引き出しができない(転職先の制度などに移さなければならない)
- 運用商品は銀行預金、保険、投資信託から、予め決められたものしか選択できない
- 掛金には限度額がある
給付算定式は「口座制」しかありませんが、会社の拠出に相当する掛金の額の決め方は以下の方法があります。
- 給与 x 定率
- ポイント x ポイント単価
- 定額
確定拠出年金は、会社にとってキャッシュフローを平準化できることに加えて、負債が発生しないこと(掛金相当の未払金を除く)、会社が資産運用を行う必要がなく、したがって追加の掛金を払うなどのリスクもないことから、会社にとっては非常に有利な制度です。ただし、事業主には従業員に対する投資教育が義務づけられています。
確定拠出年金は、法令上「企業型」と「個人型」があります。事業主が掛金を負担するのが「企業型」で、負担しないのが「個人型」です。
まとめ
退職金制度から発展してきたわが国の企業年金制度は、1960年代に開始した厚生年金基金制度および税制適格退職年金制度(2012年廃止)を経て、第二世代に突入しているといえます。高度経済成長を陰で支えた第一世代に代わり、第二世代の企業年金は公的年金の補完的役割を果たしていくものとして期待されています。
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