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2016年04月20日(水)

中小企業の退職金を決める上で注意すべき点のまとめ

経営ハッカー編集部
中小企業の退職金を決める上で注意すべき点のまとめ

taishokukin

 

大企業では退職金制度が充実した会社が多いのですが、中小企業では、法律上の義務付けが無いことや財政面の余裕がないことを理由に退職金制度を定めていない会社が少なくありません。

今回は、退職金制度の大枠を解説しながら、注意点すべき点をまとめました。

1)退職金制度を設置するメリットとデメリットをおさえる

そもそも退職金制度は法律上、企業に義務付けられているものではありません。制度の設定、退職金の支給の有無は、会社が任意に定めることができます。

中小企業において、労働条件の充実は人材確保のために欠かせないものです。退職金制度の設置は、従業員のやる気の向上や定着化を図るという大きなメリットがあります。しかし、いったん制度を設置すると「退職金支給」という義務が発生し、今後経営状態が悪化しても義務から免れることはできないというデメリットを抱えることになります。

このメリットとデメリットを比較検討した上で、自社に退職金を設定するかどうか、退職金制度の「目的」を明確にする必要があります。

2)退職金制度は2つの要素で構成される

退職金制度は「退職金規定」と「退職金の積立制度」の2つで構成されます。

「退職金規定」は、何の目的で、誰に、いくら、どんな方法で、いつ支払うのか・・等の退職金に関する取り決めを規定したものです。

「退職金の積立制度」とは、退職金の原資を確保していく手段で、以下のようなものがあります。 ・中小企業退職金共済(中退共) ・確定給付企業年金 ・確定拠出企業年金(401K) ・生命保険(養老保険など) ・預貯金(社内留保)

3)退職金制度の設計

制度の設計において定めることは多岐にわたりますが、ポイントは以下の3点です。

1.いつ払う?退職金の支払い方法の決定

現在の退職金の支払い方法は、退職一時金、退職年金、退職金前払いの3通りが一般的です。従来は、退職一時金、退職年金の2通りでしたが、近年は在職中に支払ってしまう退職金前払いも普及しはじめました。ただ、前払いについては税金・社会保険上で不利になることがあるので留意が必要です。

2.支払のタイプの決定

確定給付と確定拠出に2分されます。

「確定給付」は、何らかの基準(勤続年数や基本給など)によって将来支払われる退職金の支給額が確定しているものです。従業員からすると、将来の退職金額が確定しているため安心できるメリットがあります。しかし、資産の運用がうまくいかなかった場合は企業が不足額を補てんする必要があるため、運用リスクは企業が負担します。

「確定拠出」は、何らかの基準(役職、等級など)により、企業が支払う拠出金(毎月の積立金等)の額が確定しているものです。この場合、従業員が将来受け取る退職金額については定められていません。資産の運用がうまくいけば従業員が受け取る退職金は大きくなりますが、うまくいかなかった場合の退職金は少なくなります。つまり、運用リスクは従業員が負担することになります。

3.退職金の積立方法の決定

上に記載したように、積立方法にはさまざまなものがありますが、1&2で定めた自社の退職金制度とマッチしたものを選択することが大切です。

例えば、中小企業でよく利用されている制度のひとつに「中小企業退職金共済(略して中退共)」があります。自ら退職一時金制度を作って運用することが困難な中小企業が、機構へ掛け金を拠出することで、制度の運用や支給の手間を省くことができるという特徴があります。

中退共では資産の運用成績によって支給される退職金の金額は増減しますので、「確定拠出」型の退職金制度であれば問題はありません。しかし、「確定給付」型の退職金制度の会社が中退共で退職金資産を積立ていた場合には、不足が発生すると自社の現預金や保険資産などで補てんしなければいけませんので留意が必要です。

<関連リンク>

退職金制度の種類と仕組みは?退職金制度を作る際に知っておきたいこと 退職金の所得税と所得控除の計算方法をわかりやすく解説 退職金の住民税の計算方法をわかりやすく解説|計算例つき

平成13年 公認会計士第2次試験合格、大手監査法人勤務 平成26年 監査法人退職、税理士登録、義父が営む京都の税理士事務所にて独立開業 平成27年 大阪市中央区へ事務所移転 ひとりでの再スタートを切りました ※会計面・内部統制のコンサルティング、個人・法人の税務相談、税務顧問、その他学校法人等の特殊会計にも精通しています

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