財務諸表の見方を分かりやすく解説します|経理・税務の基本知識
知識ゼロでもOK、この人スゴいと思わせる財務諸表の見方
会計や経理の知識がないと財務諸表を本格的に読みこなすのは難しいもの。真剣に学ぼうとすれば、法人税法、消費税法、所得税法といった税法や会社法のような法律の知識も必要になってきます。
今回は財務諸表を読んでみたい、財務諸表の見方が分かれば、銀行員が言っている意味が分かる、むしろ銀行員がどう思うかを理解して先回りした対策を検討したい、という方に向けて説明したいと思います。
1)財務諸表を「見る」とはどういうことか
財務諸表の見方を説明する前に、財務諸表を「見る」とはどういうことなのか考えてみましょう。
財務諸表を見ることで、その企業が「過去から今までどういう動きをしてきたのか」、「現在はどうなのか」、そして「将来どういう風に動いていきそうなのか」が分かることが財務諸表を「見る」ことだと言えます。
ただし最後の「将来」という部分は、財務諸表からだけでは将来どうなりそうかという「傾向」しか分かりません。企業の経営戦略は大きく方向転換したり、M&Aによって企業を買収することでがらっと変わってしまうなんてことはよくあるもの。今回は「過去から今までどういう動きをしてきたのか」と、「現在はどうなのか」を見ていくにはどうすればいいかを説明します。
2)時系列という視点で見る
見るためには「視点」が必要です。まずは時系列で見ていきましょう。
決算書を用意できるのであれば、5年間分のものを用意しましょう。難しいのであれば3年間分でも大丈夫です。損益計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書の3つを各年ごとに横に並べてみます。
1. 損益計算書
売上高、売上総利益、営業利益を並べてみます。それぞれが増加しているか、減少しているか、横ばいなのかといったことを見ます。
売上総利益は、別名「粗利」とも呼ばれているものです。この数字が下がっている場合は、仕入れや製造にこれまで以上にコストがかかっているということが理由だと考えられます。なぜ、そうなってしまったのかを考えてみましょう。また同じように上がっている場合や、横ばいの場合も、なぜそうなのかを考えましょう。
次に、営業利益はどうなっているのか見てみましょう。
営業利益は本業の「利益」と言われています。売上総利益が連続して赤字になっており、この営業利益も同様に連続して赤字になってしまっている場合は、早急に事業の撤退を検討した方がいいサインです。
また、売上総利益は黒字だけど、営業利益が赤字の場合は改善の余地があります。売上総利益が赤字だけど、営業利益が黒字の場合は、営業利益が連続して黒字であればいいのですが、たまたま黒字となっている年がある場合は、やはり撤退を検討した方がいいサインとなります。
〈参考〉損益計算書の書き方に見る利益を5段階に分ける得する理由!
2. 貸借対照表
純資産、有利子負債、流動比率を並べてみましょう。
純資産とは、企業がこれまで経営してきた中で貯蓄してきた利益のこと。純資産がどう推移しているか確認しましょう。赤字のまま赤字が拡大しているような場合は、事業から撤退を検討すべきです。黒字であっても金額が少ないと感じた場合は、いつ赤字に転落するかも分かりません。
次に、有利子負債がどうなっているのか見てみましょう。
有利子負債とは、借入金のように返済の必要があるもので、社債もここに含まれます。短期借入金と長期借入金の合計金額を計算して推移がどうなっているのか確認しましょう。
有利子負債が増加傾向にある場合でも、いい増加と悪い増加があります。いい増加というのは、設備投資などの将来経営の拡大に必要な資金として借り入れを実施したことにより増加するものです。一方、悪い増加とは、経営上特に目立ったことはしていないにもかかわらず増加しているものです。いわゆる赤字補填にあたります。赤字補填になっていないか、しっかりと確認して下さい。
最後に、流動比率をみてみましょう。
流動比率とは、流動資産を流動負債で割ったものに100を掛けた数字で、パーセントで表されます。この数字が大きければ大きいほど、資金に余裕があります。一方、この数字が100%を切る場合は、1年以内に資金がショートする可能性が高いと言えます。年を追うごとに改善していないのであれば、速やかに対策が必要となります。
〈参考〉あなたの会社は安全?経営者なら知っておくべき「貸借対照表」の基本
3. キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書では、「営業活動によるキャッシュ・フロー」と、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計金額を計算して、推移を見ます。この合計金額は、「フリー・キャッシュフロー」ともいわれ、会社が自由に使える資金のことです。この金額がマイナスの場合は早急に改善策を検討する必要があります。
〈参考〉キャッシュフロー計算書のことすべて書きました【直接法&間接法】
3)同業他社の視点で見る
時系列の視点で見るだけでは、実はよく分かりません。同業他社がどうなっているのか、という視点でもみてみましょう。同業他社の数字は、中小企業庁が毎年「中小企業実態基本調査」を実施しておりホームページで結果を公表しています。この数字を活用します。
企業規模や事業内容や、適用している会計処理が異なっているため、厳密には比較できませんが大きな傾向は把握することができます。どのような差異が生じているか時系列分析と同じ視点で見てみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?ざっくりとした分析ではありますが、これらを知っているのと知らないのとでは分析力に差が出てきます。本格的に学んでみたい方は、日商簿記などで学んでみることをおすすめします。