確定申告2015年06月08日(月)
還付申告の時期は?税理士が教える消費税の還付申告で必ず確認すべき6つのこと
目次
消費税は商品やサービスを消費する最終消費者が負担します。
しかし、消費財の納付については、納税義務者である事業者が消費者から預かった消費税額から、事業者が支払った消費税額を差し引いた残りの金額について、国に納付します。
しかし、支払った消費税額の方が預かった消費税額より多いときは、その差額について還付を受けることができます。そこで今回は、還付を受けるときに注意すべきポイントについて確認します。
1)免税事業者に該当しないか
消費税の還付を受けられるのは、課税事業者です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者は還付を受けることができません。特に、個人事業者は事業開始から第2期目までは、原則として免税事業者となります。しかし、免税事業者でも、「消費税課税事業者選択届出書」をその適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(第1期目に適用を受けたい場合は第1期目の末日まで)に提出することで課税事業者となり、還付申告を行うことができます。
消費税課税事業者は改正消費税法で次のように定義されています。
・事業年度の前々事業年度(基準期間)における課税売上高が1,000万円を超える法人事業者
・前々年の暦年(基準期間)における課税売上高が1,000万円を超える個人事業者
また、既存の課税事業者は、所轄の税務署長へ「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。
ちなみに、申請に必要な書類は以下のとおりです。
法人課税事業者の場合
課税期間の末日の翌日から2カ月以内に下記書類を所轄税務署長へ提出する必要があります。1. 「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」
2. 「仕入控除税額に関する明細書(法人用)」
3. 「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」
個人課税事業者の場合
課税期間の翌年3月末日までに以下の書類を所轄税務署長へ提出する必要があります。1. 「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」
2. 「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」
※ 控除不足還付税額のある還付申告書を提出する場合、「消費税の還付申告に関する明細書」を添付する必要があります。同明細書には、従来の「仕入控除額に関する明細書」の記載事項に加えて、課税資産の譲渡や輸出取引にかかわる項目等も記載します。
課税事業者が輸出取引と国内取引を両方行っている場合
この場合、還付消費税と納付消費税が発生します。その還付税額と納付税額は上記の「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」の中で同時に申告することになり、還付税額と納付税額が相殺されます。そして、課税事業者はその差額分、還付されるか納付します。2)簡易課税制度の適用を受けないか
簡易課税制度の適用を受けている場合には、還付申告を行うことができません。簡易課税制度では、売上高の一定割合に税率を乗じた金額を支払った税額と考えるためです。そのため、簡易課税制度の適用を受けている場合に消費税の還付を受けたいときは、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」をその適用をやめようとする課税期間の初日の前日までに提出しておきましょう。
3)非課税売上高が大部分を占めていないか
非課税売上高が増えるほど、課税売上割合が下がり、還付される税額が減少することが考えられます。還付を受ける課税期間には、税金のことを考えて、計画的に売上の計画を立てることをオススメします。4)資産の購入に係る消費税を計算に含めているか
意外と忘れやすいのが、資産の購入に係る消費税額の計算です。高額な資産の購入時に消費税の還付を受ける場合には、忘れることは少ないと思います。ただし、それ以外のケース、例えば、仕入高が売上高を上回る場合に、そちらに気をとられて、つい資産に含まれる消費税額の計算を忘れてしまうものです。計算方法を工夫するなどして、十分に注意しましょう。5)個人事業者の場合、事業開始日を把握しているか
個人事業者の場合、事業開始日がいつであるかが明確でないケースがあります。例えば、税務署に提出した書類上の事業開始日よりも前に、実際の売上が存在したといった場合です。後で齟齬を指摘されないようにしっかりと確認し、各種の手続きをしないと、消費税の還付が受けられないとも限らないので注意してください。特に、所得税の青色申告承認申請書は、新規開業の場合、事業開始日から2ヶ月以内に提出する必要がありますが、消費税の届出書は課税期間の末日までに提出しなければなりません。このようなケースでは、提出期限を混同して、届出書の提出を忘れやすいものです。さらに、年末近くになってから開業したケースでは、一段と提出漏れの可能性は高まります。
6)消費税の還付申請時期を把握しているか
一般の法人課税事業者は、事業年度の課税期間に対する「事業年度分の消費税の確定申告書」による税務申告の際に、1. で述べた必要書類を税務署長に提出します。
個人課税事業者は、その年の1月1日から12月31日の課税期間に対する「事業年度分の消費税の確定申告書」による税務申告の際に、1. で述べた必要書類を税務署長に提出します。
また、輸出専業や輸出比率の高い課税事業者は、所轄税務署長に「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出すれば、課税期間は1カ月または3カ月ごとに短縮され、1年に12回または4回の還付申請が可能となります。
各届出書は税務署やネット上で入手でき、また申告書の書類などは申告時期前に税務署から送付されてきます。また、上記手続きは電子納税申告システム「e-Tax」を利用して行うこともできます。
〈参考〉電子証明書の取得方法と更新手続きの方法まとめ|e-Gov・e-Tax
7)まとめ
いかがでしたでしょうか?消費税で大事なことは、どの届出書をいつ提出するかです。期限までに提出し、受けるべき還付をきちんと受けることが肝心です。ちなみに、還付申告書の提出先は、提出するときの納税地を所轄する税務署長です。
〈参考〉まだ間に合う?確定申告で還付金を入手できる9つのパターン完全ガイド
この記事は、杉本諒税理士事務所 杉本 諒様に寄稿いただきました。
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