経理・財務2015年05月29日(金)
未償却残高って何?公認会計士が計算方法をわかりやすく解説|経理・税務の基本知識
固定資産の費用化は“減価償却”という一定のルールに基づいて計算されます。 この減価償却の仕組みの中で出てくる用語が「未償却残高」。今回は、その内容と計算方法について簡単にご説明します。
1)「未償却残高」とは
固定資産の決算書上の金額は、固定資産の取得価額から減価償却累計額を控除して計算されます。これが、未償却残高、つまり「まだ償却していない残高」です。固定資産への投資額のうち、まだ費用化がされていない部分を表しており、一般に「帳簿価額」「簿価」とも呼ばれています。 <計算式>未償却残高=取得価額-減価償却累計額(※取得時~現時点までの減価償却費の合計額)
2)未償却残高に下限ってあるの?
このように、毎年の決算処理で減価償却を進めるごとに減少する「未償却残高」ですが、どこまで小さくすることができるのかご存知でしょうか。 従来は、取得価額の95%までしか減価償却をすることができず、5%は未償却残高として残すことが決められていました。しかし、平成19年度税制改正でこの制限は廃止され、現在では備忘価額1円までの償却が認められています。つまり、未償却残高は1円まで小さくすることができるということです。 実務上は、耐用年数経過後もなお、固定資産の使用を継続しているケースが少なくなく、そのような資産については備忘価額に達するまでの償却を認めるべきであるという意見に応えた改正でした。こちらについては、平成19年度以前に取得し既に償却を始めている資産や5%まで償却が完了した資産についても適用対象となります。3)定率法については要注意!
しかし、この改正によって、定率法で減価償却をする固定資産については償却計算が少し煩雑になりました。なぜなら、定率法を最後まで適用して計算すると、耐用年数内に全額の償却を完了させることは困難だからです。耐用年数10年の資産なのに、1円まで償却しようとするとかなり長い期間償却を続けないといけないという現象が生じてしまいます。 このため、耐用年数の後半においては、定率法から「均等償却」に切り替えて計算する仕組みがとられます。4)まとめ
未償却残高という聞きなれない用語でしたが、ご理解いただけたでしょうか。未償却残高の限度額や計算方法についても再確認すると、古い固定資産の償却漏れや誤りに気付くかもしれませんね。この記事は、小林京花公認会計士税理士事務所 小林 京花 様に寄稿いただきました。 経営ハッカーでは、記事制作にご協力いただける方を募集しております。 お申し込みはこちらから